研究実績の概要 |
最終年度は、臨床検査の生理的変動要因に関する系統的再評価として、前年度までに実施した、(1)「月経周期が各種臨床検査値に与える影響」,(2)「5分間隔採血による体位変換の検査値に及ぼす影響」、今年度実施した、(3)「7段階の温度設定による血清試料の保存安定性」,(4)「微量採血法による末梢血検査の変動要因の検討」の各変動要因の分析・解析を行った。 その結果、(1)有意な変動を認めたのは、36項目中7項目で、脂質代謝にかかわるTC, HDL-C, LDL-C、電解質,Mg,C4で明瞭な影響を認めた。特に月経周期の影響が大きかったのは、HDL-C,Na,TCであった。その増減をパターン別にみると、排卵期をピークに増加するTC, HDL-C, C4、卵胞期から排卵期にかけて増加するLDL-C、排卵期に減少するMg、卵胞期に増加し、排卵期に減少するNa, Clの5つのパターンを確認した。 (2)Alb,ALT,AST,LD,CK,TCは臥位に比べ、座位と立位で有意に上昇した。一方、Ca、RBC,Hb,Htではその程度が少なく、およそ臥位に比べて、座位で平均2.7%、立位で平均6.4%の上昇に留まった。一連の測定値の変化を5分間隔で調べると、体位変換後およそ15~20分で、測定値がその体位に対して安定化することを明らかにした。 (3)0℃以下の5段階も含め7温度条件を同時に比較検討した結果、-30℃以下の場合、C3以外の検査項目では測定値が安定であった。また、0℃と-10℃では、-20℃や4℃と比べ、多くの検査項目で測定値がより不安定であった。 (4)静脈血・毛細管血の差違の検討では、RBC,Hb値が静脈血よりも毛細管血で有意に高く、BASOが有意に低い結果であった。なお、これらの研究成果は、第55回日本臨床化学会年次学術集会ならびに、第62回日本臨床検査医学会学術集会にて発表した。
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