研究課題
本研究は福島原発事故による被災住民の低線量被ばくの人体への影響を調査するため、fluorescent in situ hybridization (FISH) 法を用いた染色体解析による生物学的線量評価方法の確立を目的とする。国際原子力委員会 (IAEA) は、原子力災害などによる急性期の放射線被ばくによる生物学的線量評価として二動原体染色体 (dicentric chromosome : DIC) 解析 (dicentric chromosome assay : DCA) を推奨している。本研究では、Giemsa染色法とCentromer-FISH法の2種類を用い、100 mSv以下の低線量では、前者で2,000個以上、後者では1,000個以上の分裂細胞の解析が必要であることを報告し、さらに1回のCT検査による二動原体染色体 (DIC) 形成ついて解析を行い、1回のCT検査でDICが有意に増加することを見出した(Scientific Rep, 2015)。これは数十mSv程度の放射線被ばくによってDNAの2本鎖切断が起こっていることを示唆する。また、白血病やがんの発生に繋がる安定型染色体異常である転座型染色体も不安定型染色体異常であるDICと同頻度で形成されると考えられていることから、1回のCT検査前後での転座型染色体の出現頻度を解析したが、有意な増加は認めなかった(2015年国際放射線影響学会で発表、J Radiat Res, 2016)。 これは転座型染色体は安定型染色体のため、加齢や喫煙、過去の医療被ばくや病気への治療などに行楽因子が形成数に影響しており,1回のCT検査による被ばくの影響を解析する方法としては適してないと考えられた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
J Radiation Research
巻: 1 ページ: 1-7
10.1093/jrr/rrv090
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 13882
10.1038/srep13882.