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2014 年度 実施状況報告書

新規卵巣癌バイオマーカーTFPI2の血中発現メカニズムと機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 25460695
研究機関横浜市立大学

研究代表者

荒川 憲昭  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (60398394)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード卵巣癌 / 明細胞腺癌 / 診断マーカー / バイオマーカー / TFPI2
研究実績の概要

昨年度は、卵巣明細胞腺がん(CCA)におけるTFPI2遺伝子のプロモーターメチル化および転写因子p53とHNF1bとの関連性について検討した。今年度は、多数の患者組織および患者血清を用いて、組織中TFPI2 mRNA発現量と血清中TFPI2濃度を測定し相関関係を調べた。CCA患者群では組織中mRNA発現量に反映して血清中TFPI2量が特徴的に高かったが、臨床病期I期の症例においては血清中TFPI2量が低い例が約50%存在し、それらは組織中においてもTFPI2 mRNA発現量が低い傾向にあった。したがって、患者血清中に存在するTFPI2はCCA細胞から直接的に分泌されたものであるとともに、TFPI2は血清中で病変組織の活動を捉えるバイオマーカーであることが考えられた。
一方、TFPI2は細胞外マトリックス(ECM)の構成成分であることが知られていることから、血中にTFPI2が放出されるためには、TFPI2がECMから遊離する何らかのメカニズムが存在すると考えられる。このメカニズムを明らかにするために、分泌型TFPI2のC末端を解析した。CCA細胞培養上清中から分泌型TFPI2を精製し、得られたタンパク質を重酸素水存在下でトリプシン消化を行い、質量分析装置にて分析した。その結果、分泌TFPI2はC末端領域が大きく切除されていることがわかった。TFPI2のC末端ポリリジン領域はECMとの結合に関与することが指摘されていることから、明細胞腺がんにおいては、TFPI2はECM上でプロテアーゼの作用を受け血中へ放出される可能性があることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、CCAにおけるTFPI2の産生機序と患者血液中への放出機序を明らかにすることである。TFPI2は前立腺がんや消化器系がんなどにおいては、プロモーターの異常メチル化により発現が消失するが、卵巣CCAにおいては逆に発現上昇することから、その原因を解明することは重要である。昨年度および今年度の実験から、TFPI2遺伝子遺伝子のプロモーターの状態と関与する転写因子、組織中TFPI2遺伝子の発現量と血中TFPI2量の相関関係、細胞外に遊離したTFPI2のC末端の切除を確認することができ、TFPI2の血中発現機構が明らかになりつつあると思われ、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

さらに多数、多種類の血清検体を用いてTFPI2測定を行いデータの蓄積を進める。ROC解析から算出されるカットオフ値から、感度、特異度を検証し、卵巣癌診断マーカーとしての精度を評価する。また、TFPI2の切断や翻訳後修飾といったタンパク質科学的な情報の蓄積を進める。今年度は最終年度であるため、データ整理を進め、特許出願、成果発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

購入予定だった海外バイオバンク検体の納期が遅れ、予定していた費用を持ち越した。また国際学会に参加する予定であったが、渡航先の情勢不安のために学会参加を取りやめために未使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

海外バイオバンク検体のデータ取得は翌年度の施行に変更した。またデータ解析用のソフトや分析に必要な消耗品を購入する必要が出たため、それらの購入資金に当てることにする。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Mass spectrometric analysis of the phosphorylation levels of the SWI/SNF chromatin remodeling/tumor suppressor proteins ARID1A and Brg1 in ovarian clear cell adenocarcinoma cell lines.2014

    • 著者名/発表者名
      Kimura, A., Arakawa, N., and Hirano, H.
    • 雑誌名

      J Proteome Res.

      巻: 13(11) ページ: 4959-4969

    • DOI

      10.1021/pr500470h

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Secretome-based identification of PGE2-regulated proteins in human abdominal aortic aneusysm2015

    • 著者名/発表者名
      Ishiwata, R., Yokoyama, U., Arakawa, N., and Ishikawa, Y.
    • 学会等名
      6th International conference on phospholipase A2 and lipid mediators.
    • 発表場所
      東京京王プラザホテル
    • 年月日
      2015-02-10 – 2015-02-12
  • [学会発表] 培養細胞を利用した新規卵巣がん血清診断マーカー候補蛋白質の同定2014

    • 著者名/発表者名
      荒川憲昭
    • 学会等名
      日本プロテオーム学会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2014-07-17 – 2014-07-18
    • 招待講演
  • [学会発表] MRM法による卵巣明細胞腺癌細胞株特異的なSWI/SNFクロマチン再構成複合体因子Brg1のリン酸化レベル低下の解析2014

    • 著者名/発表者名
      木村鮎子, 荒川憲昭, 平野久
    • 学会等名
      日本ヒトプロテオーム学会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2014-07-17 – 2014-07-18
  • [学会発表] アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞におけるリン酸化タンパク質の網羅的解析2014

    • 著者名/発表者名
      井野洋子、荒川憲昭、石黒斉、上村博司、窪田吉信、平野久
    • 学会等名
      日本プロテオーム学会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2014-07-17 – 2014-07-18
  • [備考] プロテオーム科学研究室

    • URL

      http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/lab/proteome.html

  • [備考] 広報誌innovation vol.14 特集: 産学連携 革新的バイオマーカーの開発

    • URL

      http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~kyotenpr/pr

  • [備考] 先端医科学研究センター市民講座「たんぱく質の異常で病気を診(み)る~早期発見・早期治療に向けて~」

    • URL

      http://www.u-presscenter.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=7456

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公開日: 2016-05-27  

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