研究課題/領域番号 |
25460696
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
高橋 伸彦 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (20372279)
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研究分担者 |
家子 正裕 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (50250436)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肥満症 / 第VII因子活性化プロテアーゼ / 第VII因子 |
研究実績の概要 |
1. 培養細胞モデルにおけるFSAP発現の検討:平成26年度はその前年度より対象としている脂肪細胞、肝細胞およびマクロファージに加え骨格筋細胞においても検討を始めた。その中で主だった知見について述べる。肝細胞におけるFSAPの遺伝子発現はオレイン酸負荷あるいは核内受容体PPAR-γの作動薬であるpioglitazoneの添加によって低下するという結果が得られた。また、骨格筋細胞のモデルとしてC2C12細胞を用い、その分化過程におけるFSAPの遺伝子発現を検討したところ、FSAPの遺伝子発現は分化誘導後に低下するという知見が得られた。これまでに確認できたFSAPの変化について、現在詳細な条件検討やメカニズム、病態的意義に関して検討を行っている。 2. 第VII因子活性化プロテアーゼの検討に関連した課題として、昨年度の報告書に記載した研究計画どおり、第VII因子(FVII)そのものについても検討を行った。その結果、これまでに報告のなかった脂肪細胞によるFVIIの産生や分泌について発見することができた。そこで本現象について分子メカニズムを検討した。その結果、肥満の病態に関わる炎症性サイトカインであるTNF-αや交感神経の緊張を模倣するβ刺激薬イソプロテレノールの刺激によって、脂肪細胞はそれぞれ異なる機序を通じてFVIIを分泌することが明らかとなった。FVIIは血液凝固のみならずインスリンシグナルに影響を与えることが知られており、本研究結果は脂肪細胞由来のFVIIが肥満の病態に関与することを示唆する重要な新知見であると考える。なお、本研究成果は論文としてまとめ英文誌に受理および収載された。この研究をさらに発展させるため、マクロファージにおけるFSAPやFVIIに関しても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的検討に関しては本学における医療機関の再編によって問題が生じ遅れている。そこで、当初の研究計画書に記載のとおり現在成果の出つつある基礎的検討を優先させ研究を遂行している。この基礎的検討では、脂肪細胞、肝細胞、マクロファージおよび骨格筋細胞といった4種類の細胞におけるFSAP発現の検討を行っており、ネガティブな結果も多い中、一定の知見を生み出している。また、第VII因子活性化プロテアーゼに関連した課題として第VII因子の発現調節に関しても着目し、この第VII因子がこれまで報告のなかった脂肪細胞から分泌されることを発見し、さらに機序の解明を加えて成果をまとめることができた(英文誌に受理)。以上、得られている成果を勘案し、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 第VII因子活性化プロテアーゼに関して:これまでに行った様々な細胞種における検討結果を踏まえ、今年度は最も知見の得られている肝細胞を中心に検討を進めることとする。 2. 第VII因子活性化プロテアーゼに関連し、第VII因子自体に関しても検討を加えて行く。昨年度は脂肪細胞が第VII因子を分泌するという新たな知見についてまとめることができた。肥満の病態において脂肪細胞とともにマクロファージの役割は重要であるため、今年度はマクロファージにおける第VII因子の発現に関しても検討を加えていくこととする。 3. 臨床的検討の進行が遅れた分、当初の研究計画書に記載のとおり、現在成果の上がっている基礎的検討にフォーカスを当て研究全体を進行させていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本学における医療機関再編の影響で患者サンプルの収集に問題が発生し、臨床的検討に問題が生じた。そのため、臨床的検討に使用するFSAP ELISA kitの購入費に該当する部分が繰り越しになっているのがその主たる理由である。また、なるべく同等のものがあれば安価な試薬を選ぶようにしていることも理由の一つかと思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は本件研究課題の最終年度であり、成果をまとめる必要があるため、研究をより一層加速させる。そのため、現時点で研究成果が得られつつある基礎的検討に重点をおいて研究を遂行する計画であり、申請書に記載のとおり相当額の支出が見込まれる。
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