研究課題
本年度は昨年度に引き続き細胞モデルでの検討を行った。1.前年度に第VII因子活性化プロテアーゼ (factor seven activating protease、FSAP) の発現を確認しているC2C12骨格筋細胞を用いた。培地に糖尿病治療薬 (メトフォルミン、シタグリプチン)、脂質異常症治療薬 (プラバスタチン、Wy-14643)、あるいは小胞体ストレス誘導剤 (ツニカマイシン、タプシガルギン) を一定時間添加した後、FSAPの遺伝子発現を検討した。その結果、メトフォルミンとタプシガルギンはFSAP遺伝子の発現を低下させることが判明した。そこで骨格筋におけるFSAP発現低下の意義を検討するため、RNAi法を用いてFSAP遺伝子発現低下モデルを作成した。次にそのモデルにおいて骨格筋の代謝や炎症に関与する種々の遺伝子 (GLUT4、UCP1、サルコリピン、MCP1) の発現を検討したところ、GLUT4の遺伝子発現が変化するという知見が得られた。また、検討因子間相互の影響を横断的に解析する中で小胞体ストレスがサルコリピンの発現を低下させると言う知見も得られた。2.肝細胞の脂肪化や脂質代謝との関係を探る目的で、肝癌細胞株Huh7に種々の薬品を作用させたところ、予備実験において脂肪酸の一種であるオレイン酸あるいは脂質代謝に関わる核内受容体PPAR-γの作動薬ピオグリタゾンがFSAPの遺伝子発現を低下させたため、その濃度や作用時間を変化させ検討を続けたが蛋白発現に明らかな変化を見出せなかった。3.THP-1マクロファージ細胞に炎症の惹起に関わるリポ多糖を作用させFSAPや第VII因子の発現や分泌を検討したところ、FSAPに明らかな変化は認められず、一方、第VII因子は分泌が増加するという知見を得た。以上、本研究によって新規の知見も得られており、今後も研究を展開する予定である。
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