研究課題/領域番号 |
25460698
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
相磯 聡子 杏林大学, 保健学部, 准教授 (40195144)
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研究分担者 |
大西 宏明 杏林大学, 医学部, 准教授 (80291326)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | microRNA / 血清 / バイオマーカー |
研究概要 |
1年目においては健常人血液を用い、採血からmicroRNA測定までの条件検討等を行った。 1.血中レベルが極めて低い遊離microRNAの測定において、血液細胞由来のmicroRNAの混入は測定結果に大きな影響を及ぼす。我々は通常の採血により血清および血漿を得、Kirschnerら(2011)の報告に基づき414 nmの吸光度によりヘモグロビン濃度を測定した。その結果、5検体いずれにおいても血清と比較し血漿で明らかに高値を示した。この結果から血漿は血液細胞由来のmicroRNAが混入する可能性が高く、検体としては血清がより適していると考えられた。また付加情報として414 nmの吸光度を明記することとした。 2.血中の遊離microRNAはエンドソームに包まれているためmRNAと比較し安定であると考えられている。我々は検診における通常の採血によって得られた検体を用いて遊離microRNAを測定することを前提とし、採血後、血清を4℃で保存した場合の安定性をmiR-223を指標として測定した。非凍結下ではmicroRNAはエンドソーム中に存在すると思われるが、24時間保管後にはmiR-223の相対量が約38%に低下した。この結果から血中遊離microRNAの測定にあたっては、血清分離後速やかに分注し、凍結あるいはフェノール含有溶解液を加えるなど分解を防ぐための処理をする必要があると考えられる。 3.本研究の申請以降に海外において発表された報告も参考にして、対象とするmicroRNAをmiR-20a(miR-17 family)、-21、-24、-145、-223の5種に決定した。 4.試験的に健常人10名を対象として環境要因、遺伝的要因に関するアンケートの実施と、上記5種のmicroRNAの定量を実施した。各環境要因、遺伝的要因と血中遊離microRNA量との相関解析は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の申請時以降、ABI社のTaqMan microRNA AssaysおよびSpike-Inコントロールを用いた血中遊離microRNA定量に関連したいくつかの報告があり、本アッセイ系の特異性や定量性は確認されたため、これらの検討は行う必要がないと判断した。一方、必要経費の算定がやや甘く、当初計画していたmicroRNA種すべてについて定量を実施することが困難であることが判明した。この点も関係し、対象とするmicroRNA種について、直近の報告も参考にして再検討した。これに予定外の時間を要した。また患者検体を用いた研究に関する倫理審査申請書の作成に際し、担当医とのやり取りにやや時間を要した。ゆえに全体としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目はまず健常人50名について、アンケートの実施と血中遊離microRNAの定量、およびこれらの相関性解析を行う。肺がん患者約60名については、約1年半をかけアンケート調査および検体の収集を行い、その後データ解析を行う。 1.健常人を対象にした解析:年齢、性別、環境要因(能動喫煙、受動喫煙、飲酒、ウイルス感染、既往歴、服薬)、遺伝的要因(近親者の肺がん罹患率)と血中遊離miR-20a、miR-21、miR-24、miR-145およびmiR-223量との相関性解析を行う。また正規分布から大きく外れた値を示した検体についてはゲノムDNA解析を行う。 2.治療開始前の肺がん患者と対象にした解析:最初の治療を開始する前に採血し、上記5種のmicroRNAの定量を行う。同時に環境要因(能動喫煙、受動喫煙、飲酒)、遺伝的要因(近親者の肺がん罹患率)についてのアンケート調査を行う。また性別、年齢、既往歴、服薬、ウイルス感染、肺がんの種類、Stage、初発/再発の別の情報を医療情報として得る。血中microRNAレベルとこれらの因子との関連について解析する。 3.抗がん剤治療、放射線治療あるいは切除の直後の血中microRNAレベルを測定する。これは治療による血中microRNAレベルへの直接的な影響と考えられる。 4.治療後一定の期間を経て、再度血中microRNAレベルを測定する。これにより血中microRNAレベルと治療効果および予後との関係を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺がんの診断および予後判定に用いるmicroRNA種については本課題申請時におおよそ決定していたが、本研究開始時に再度新しい文献の検索を行った結果、対象とするmicroRNA種を再検討する必要があると判断された。これに伴いこの間、microRNA種特異的な定量に用いるプライマー等の購入を見合わせ、定量条件検討に必要な試薬のみを購入した。その結果、microRNA種特異的な試薬は次年度に購入することになった。 今回microRNA種を再決定し、新年度より本格的に定量に取り掛かる。ゆえに平成25年度からの繰越分と26年度使用予定額の総額を使用して、全検体の定量に必要な試薬を2~3回に分け購入する予定である。
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