最終年度であるH28年度は、H28年度に収集された患者およびコントロール血清について解析対象とする4種のマイクロRNA量を測定するとともに、これまでに収集された全血清についての定量結果の解析を行った。これにより以下の4つの結果が得られた: 1.初期の非小細胞肺がん患者(stage 1-2)の血中濃度をコントロール群と比較したところ、4種のマイクロRNAのうち2種で有意に低下していた(何れもP < 0.001)。さらにこれらに関するROC曲線から、いずれの血中マイクロRNAも初期の肺がんを高い感度および特異性で識別することが示された(AUC = 0.877および0.849)。この他の2種については有意差が見られなかった。2.がん切除前と切除1年後の濃度を比較したところ、上記2種のマイクロRNAで切除後に健常者の濃度に近い値(P = 0.12およびP =0.077)まで上昇していた。この他の2種については有意差が見られなかった。3.4種のマイクロRNAすべてで、stageが進むに従い、血中濃度が有意に上昇した(stage 1-2 vs 4: P =0.0011、0.011、0.020、0.00031)。4.Stage 3とstage 4の患者血清を用い、予後と血中濃度の相関を調べたところ、1種のマイクロRNAで予後不良で濃度が高いことがわかった。5.化学療法による血中マイクロRNA濃度への影響を、4種のマイクロRNAについて調べたが、化学療法開始約1週間後および効果判定時のいずれにおいても、治療開始前との有意差は見られなかった。 上記、H28年度の研究結果から、今回解析した4種のマイクロRNAのうちの2種が、日本人集団において早期肺がんの診断マーカーとして有望であることが示唆された。現在これらの結果を含む論文を作成中である。 また前年度までの結果を国際誌に投稿し、アクセプトされた(in press)。
|