研究課題/領域番号 |
25460701
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
木村 聡 昭和大学, 医学部, 教授 (30255765)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | IMA / PON1 / sRAGE / 脳血管障害 |
研究概要 |
虚血変性アルブミン(ischemia-modified albumin:IMA) は、人体組織の虚血状態において、N末端アミノ酸8個に非可逆的変性をきたしたアルブミンである。心筋梗塞初期での血中濃度上昇が報告されており、組織虚血のマーカーとして各種疾患での動態が着目されてきた。一方、脳卒中や脳梗塞といった脳血管障害は、我が国の死亡統計で上位5番以内にランクされる「国民病」である。現在、国内に広く普及している頭部CT撮影は、脳出血急性期の検出に優れているが、脳梗塞では変化に乏しいため、診断は必ずしも容易ではない。もし血液マーカーで診断できるようになれば、混雑を極める救急医療の現場に大きく貢献できる可能性がある。 そこでIMAと関連マーカーに注目し、脳血管障害での応用が出来ないかを検討した。今までの研究からIMAに加え、血清paraoxonase1 (PON1)活性、soluble receptor for advanced glycation end-product (sRAGE)が有望な候補として浮上していたため併せて検討した。PON1とはリポ蛋白であるHDLの粒子内に存在する抗酸化酵素で、動脈硬化疾患での活性低下や、血液浄化での活性回復を我々は過去に報告している。またsRAGEは、脳を始めとする組織の壊死において、その進展に伴い血中への漏出が推定される蛋白である。 測定方法は申請者の既報によった。同意の得られた被験者より血液1mlを採取し、比色定量する簡便な分析法である。sRAGEはELISA法で測定した。15名の脳血管障害患者で検討した結果、IMA、PON1活性は健常者にくらべ有意な変動がみられなかったが、sRAGEでは発症早期より上昇傾向をみとめ、加療により低下する症例がみられた。現時点ではまだ症例数が限られるため、さらに症例を集め応用の可能性を探っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期検討としての臨床材料の収集、安定したアッセイ系の確立にはほぼ成功している。本件について経験豊富な米国Tuoro大学のGugliucci教授、Menini教授との連携も円滑にとられており、症例の集積と各種病態での変動について解析が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1)脳梗塞と脳出血でのsRAGE、PON1活性、IMAの動きに差が見られないか検討する。 2)臨床的有用性が証明された場合、ルーチンの臨床検査項目として自動分析機に搭載できるキット開発を目指す。 上記の3項目はいずれも簡便な比色法で行えるため、自動化に大きな支障はない可能性が高い。 3)PON1測定系の改善を目指し、HDL粒子中でのPON1活性の分布を明らかにする。 4)IMA上昇が呼吸不全と関連している可能性があるため、引き続き関連疾患での動態を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始に当たり、アッセイ方法について指導をお願いする米国カリフォルニア州Tuoro大学のGugliucci教授、Menini教授との打ち合わせのため渡航経費を予定していた。しかし両氏が2013年4月に来日され、申請者の施設で講演いただいた上、今後の研究の進め方について討議を進めることができた。 打ち合わせの費用は次年度以降の学会発表、研究打ち合わせのための米国への渡航費に充当の予定である。
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