研究課題/領域番号 |
25460708
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
村嶋 貴之 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (20263923)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 凝集誘起発光 / テロメア / アミロイド |
研究実績の概要 |
FRETによる蛍光消光を利用したテロメア鎖の検出において問題となるバックグラウンド蛍光などに対処するため、凝集誘起発光型(AIE)の蛍光色素を結合させたプローブによる検出法を開発した。プローブには、テロメア鎖の相補配列をもつ12merのオリゴヌクレオチドにAIE色素を結合させたコンジュゲートを用い、様々な鎖長・濃度のテロメア鎖を含む試料と混合し、蛍光を測定したところ、この方法によって、シグナルON型のテロメア鎖検出が可能であることがわかった。感度についてはFRETを利用する方法の方が高かったが、利用するAIE色素をより蛍光量子収率の高いものとすることにより改善が期待できる。また、凝集により発光強度が増加するという性質は、本質的に「有害成分の蓄積により発症する」疾患の診断には適していると考えられるため、近年問題となっているアルツハイマー病の原因とされているアミロイドβの凝集体の検出について、本手法を応用することを検討した。ただし、一般にアミロイドの凝集は極めて遅い反応であり、その点を改善しないと迅速分析、あるいは多数の検体を分析することはできない。そこで、アミロイドβの凝集を促進する性質を持つペプチド(AFPP)にAIE色素を結合させたものをイニシエーター兼プローブとして用いることとし、様々な濃度のアミロイドβ水溶液に混合したところ、数時間以内に凝集体が形成され、濃度に比例した蛍光が観測されることが明らかとなった。モデル試料による測定では、検出限界は4.2 nMであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であるテロメア鎖長の簡便な定量については、ダイナミックレンジ、感度ともに良好な結果を得ており、順調に進展していると考えている。また、テロメラーゼ阻害剤の活性測定については成果を得ていないが、本手法の応用でアルツハイマーの原因と考えられているアミロイドβの定量ができることを明らかにしており、研究の発展可能性からも順調と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤の主流の一つであるテロメラーゼ活性阻害剤の開発に貢献できるよう、阻害活性測定のためのプロトコルを確立する。また、ガンと並んで大きな社会問題ともなっているアルツハイマーの早期診断に応用できる手法を確立する。そのため、用いるAIE型蛍光色素の検討と、測定条件の最適化による感度とダイナミックレンジの向上に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたテロメラーゼ阻害剤の阻害活性測定について、実験計画通りに進展しなかったため、予定していたサンプル購入や測定のための支出が増えなかったため。また、並行して本研究の成果の発展性を探るため実施していたアルツハイマーの早期診断法の開発が、想定よりも良好な進展であるため、そちらにエフォートを割いたため。
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次年度使用額の使用計画 |
テロメラーゼ阻害活性の測定については、継続検討する。また、本研究で開発中の手エロメラーゼ活性測定法の応用として、同様の手法で行っているアルツハイマーの早期診断法の開発において、進展があったため、その検討を進める。
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