研究実績の概要 |
本研究では、関節リウマチ(RA)において、新たな客観的評価法の確立を目的とし、バイオマーカーによる評価法の探索と臨床的意義の検討を行った。 平成25年度は、TNF阻害薬またはIL-6R阻害薬で治療したRA患者におけるマルチバイオマーカーを用いた疾患活動性推定スコア(MBDA)の臨床的有用性を検討し、TNF群ではいずれのマーカーとも低下したのに対し、IL-6R群ではIL-6のみ上昇し、異なる挙動を示した。さらに、MBDAは疾患活動性、治療効果、関節破壊、機能障害も含めた予後予測でも従来法を上回る精度であった。 平成26年度は、MBDAと関節破壊との関連性をさらに検討した。MBDAと関節破壊スコアの解析では、関節破壊が進行した群ほどMBDAスコアが高く、24週時点のMBDAは従来法と比べの0-1年の関節破壊を良好に予測した。 平成27年度は当科で行ったHONOR study (臨床的寛解達成後の生物学的製剤休薬試験)において休薬後の予後予測因子としてのMBDAの評価を行い、休薬時MBDA低値では、その後の臨床的寛解維持率に高く、逆に休薬時MBDA高値では、その後の再燃率が高いことを示し、休薬後の予後予測因子としての有用性を示した。また、新規バイオマーカーとして14-3-3η(eta), C1M, C2M, C3Mの妥当性、診断、アウトカム予測における有用性の検討を行った。14-3-3η(eta)は、リウマトイド因子および抗CCP抗体と強く相関し、診断マーカーとして有用性であり、かつ製剤選択における指標となりうることを示した。またC1M, C2M, C3Mは、RA疾患活動性との関連性を見出したほか、特にC3Mとその関連物質は線維化の指標としても有用でJAK阻害薬では抗線維化作用が期待されることを明らかとした。
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