研究課題
細胞から放出されるexosomeやmicrovesicleと呼ばれる細胞外小胞は、細胞間の情報伝達に重要な役割を持つと考えられている。膜小胞と様々な疾患との関連性も示唆されており、癌においては、癌細胞や周囲の正常細胞から産生された膜小胞が、癌細胞の増殖や浸潤、転移に関与することも報告されている。また、膜小胞は、血液、尿、唾液などにも多く存在し、その膜構造に内包される多様なタンパク質や核酸は、消化酵素による分解を受けにくいことから、バイオマーカー探索のための有用な試料としても着目されている。本研究は、大腸癌の早期診断や再発予測に有用な新たな腫瘍マーカー候補タンパク質を同定することを目的として、プロテオミクスの手法を用いて、大腸癌患者および健常者の血液から調製した膜小胞画分の解析をおこなった。我々は、大腸癌組織から調製した膜画分の網羅的な定量解析によって、癌の進行に伴い発現変化する膜タンパク質や細胞外分泌タンパク質を同定し、Selected Reaction Monitoring (SRM)法を用いた検証をおこない、多数のバイオマーカー候補タンパク質を見い出した。そこで、本研究では、それらのマーカー候補タンパク質について、血中膜小胞画分における発現解析をおこなった。転移なし、または転移ありの大腸癌患者および健常者の血清から超遠心法を用いて調製した血中膜小胞画分をトリプシン消化後、SRM法により解析した。その結果、20種類ほどのマーカー候補タンパク質が検出され、幾つかのタンパク質は、癌の悪性化に伴って、有意に変化することが示された。その中で、健常者や転移なしの大腸癌患者に比べて、転移ありの大腸癌患者の血中細胞外小胞画分で増加のみられた3つのタンパク質に着目し、別検体セットでの検証をおこなった。また、血液サンプルからの膜小胞画分の調製法を検討し、そのプロテオーム解析をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
目的とする腫瘍マーカー候補となるタンパク質を同定し、その検証作業を進めているため。
さらに、新たな腫瘍マーカー候補タンパク質を同定するために、血中膜小胞画分のプロテオーム解析をおこなう。また、より多検体での検証作業を進める。
すべて 2014
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Mol Cell Proteomics
巻: 13(6) ページ: 1471-1484
10.1074/mcp.M113.037093