3か月以上続く痛みを慢性痛というが、特に難治性の慢性痛の治療は困難である場合が多い。治療に関しては、集学的に多職種の専門家による診療(集学的慢性痛診療)が有効であるとされている。しかし痛みは評価が難しく、現在までの研究では患者の病態評価は多くの場合自記式の問診票によりなされており、客観性に欠ける。痛みには客観的な指標がない。我々は遺伝情報が痛みの指標になるのではないかと考えている。その一つとして、血中のマイクロRNAが痛みの指標になる可能性について注目した。我々は集学的診療を主体として6か月間の治療を行い、その前後で血液を採取した。そして、検体を‐80℃で保存した。そのうち、痛みが減少した症例、不変であった症例などを集めて網羅的な解析を行った。研究期間内に集学的診療を行った症例のうち9例の血液で、治療前後の採血を行い、マイクロRNAの解析を行った。臨床的な指標としては、痛みの強さ、精神的な状態(うつ、不安)、痛みの破局的思考、生活の質(EQ-5D、PDASなど)、身体機能(time up to go、片脚立位など)を加えて行った。その結果、統計学的有意差をもって痛みの改善の指標となる可能性を示唆するマイクロRNAが複数存在した。また、精神的な評価とマイクロRNAの関連についても有意差を持つものが存在した。ただし、9例と症例数が少ないため、今後さらに症例を集積しマイクロRNAの解析を行うとともに、MRIなどの画像による評価との比較なども行う予定である。
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