研究課題
基盤研究(C)
本(初)年度は、本研究の土台の一部となる成果を原著論文にまとめた(Kurihara et al., Mol Pain, 2014)。すなわち、炎症性疼痛発症におけるカゼインキナーゼ1活性化の役割に関する報告である。急性炎症性疼痛にはカラゲニンモデル、遷延性炎症性疼痛には完全アジュバント(CFA)モデルを用い、それぞれ投与後6時間、あるいは3日の時点に市販のCK1阻害薬(IC261)、あるいは新規CK1阻害薬(TG003)を髄腔内投与すると、両モデルにおける疼痛行動を濃度依存的に抑制した。しかし、カラゲニンあるいはCFAの投与は、脊髄およびDRGにおいて、CK1α、δおよびεアイソフォームタンパクの有意な発現上昇をもたらさなかった。そこで、これらCK1阻害薬の脊髄における作用メカニズムを検討するため、脊髄横断スライス標本を作製し、痛覚情報修飾に重要な脊髄後角膠様質ニューロンから膜電位固定下で自発性興奮性シナプス後電流(EPSC)、あるいは自発性抑制性シナプス後電流(IPSC)を、ホールセルパッチクランプ法を用いて記録した。コントロール群においては、両阻害薬(1 μM)の単独灌流適用はEPSC、IPSCの発生頻度、大きさ共に影響を与えなかった。一方、両炎症モデルにおいては、EPSCの頻度と大きさを有意に抑制したが(頻度をより顕著に抑制)、IPSCの頻度と大きさには影響しなかった。以上の結果から、カラゲニンあるいはCFAモデルマウスにおける脊髄痛覚伝達に、両起炎物質の炎症刺激がもたらすCK1活性化が寄与し、CK1阻害薬はこの活性化、特にEPSCの頻度をより顕著に抑制することから主にシナプス前における活性化を抑制することで鎮痛効果を示すことが推測された。またTG003を含めた複数の新規CK1阻害薬に関し、特許出願を行った(特願2013-261396)。
2: おおむね順調に進展している
本申請研究の土台の一部となる成果の一端を原著論文にまとめ、出版することができた。また疼痛治療に有望な新規カゼインキナーゼ1阻害薬を新たに見出し、特許出願を行った。現在原著論文にまとめている途中である。
各種疼痛モデルを用い、研究計画調書あるいは交付申請書に記載した各種薬物の効果を疼痛行動学的・電気生理学的に引き続き解析・検討していく予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Molecular Pain
巻: 10 ページ: 17
10.1186/1744-8069-10-17
Neuroscience Research
巻: 78 ページ: 72-80
10.1016/j.neures.2013.09.005
Journal of Biological Chemistry
巻: 288 ページ: 32720-32730
10.1074/jbc.M113.452706
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~pharmaco/