研究課題
本年度は、昨年度見出した複数の新規カゼインキナーゼ1阻害薬の鎮痛効果の特徴に関して検討を行い、中でも興味深い薬理学的特徴を示した1つの化合物Xに関して、集中的な解析を行った。化合物Xは髄腔内投与において特に炎症性疼痛(マウスカラゲニンモデルを用いた、機械的および熱性痛覚過敏現象)に対して低用量(1 pmol)でも強い鎮痛効果を示す化合物であった。そこで同疼痛モデルを用いて全身投与(腹腔内投与)の効果を検討したところ、比較的低濃度(1 mg/kg以下)でも鎮痛効果が認められた。そこで、腹腔内投与による鎮痛効果の薬理学的解析を行ったところ、カンナビノイド2受容体拮抗薬、末梢型オピオイド受容体拮抗薬、あるいはある種のニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプ拮抗薬(これらの拮抗薬を化合物Xと同時腹腔内投与)により有意に鎮痛作用が抑制されたことから、鎮痛作用の一部は末梢に由来することが示唆された。さらに、霊長類疼痛モデルを用いて、化合物Xの鎮痛効果を検討した。カニクイザル収束光熱刺激誘発疼痛モデルは、オピオイド鎮痛薬が薬効を示すモデルとされるが、化合物X(10 mg/kg)の経口投与は、モルヒネ(10 mg/kg)あるいはプレガバリン(30 mg/kg)経口投与による鎮痛作用と同等以上の鎮痛効果を示した。すなわち、化合物Xは霊長類に対しても経口で有効性を示し、しかも現在まで目立った副作用を引き起こさないなど、新規鎮痛薬のリード化合物として有望であることが示唆された。今後は化合物Xの詳しい作用メカニズムを検討するとともに、中枢および末梢組織におけるカゼインキナーゼ1シグナル伝達と疼痛受容調節に関して更なる解析を継続する予定である。
2: おおむね順調に進展している
疼痛治療に有望な新規化合物を見出し、PCT出願を行った。本新規化合物は霊長類においても経口投与で鎮痛作用を示すとともに、薬効発現用量で副作用は目立った副作用は見られないなど、興味深い結果が得られつつある。
各種疼痛モデルマウスを用い、研究計画書調書あるいは交付申請書に記載した各種薬物の効果を、引き続き疼痛行動学的・電気生理学的に解析を行うとともに、新たに見出された新規疼痛治療候補化合物の作用機序を検討していく予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Molecular Pain
巻: 11: 6 ページ: 1-15
10.1186/s12990-015-003-8
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~pharmaco/