研究課題/領域番号 |
25460726
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 利彦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40265799)
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研究分担者 |
柴田 護 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60286466)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 三叉神経節 / TRPV1 / 神経原性炎症 / 硬膜 |
研究概要 |
平成25年度は三叉神経に侵害刺激を加えた際の脳硬膜における肥満細胞の形態変化について検討するため雄性マウス( C57BL/6J )を使用した。 左顔面三叉神経領域にカプサイシン(10 mM、30分)局所投与を6日間連日施行した群(刺激群)を作成した。対照として無処置のマウスを使用した。灌流固定後に脳硬膜を摘出しトルイジンブルー染色を行った。同側脳硬膜の中硬膜動脈領域を中心とした直径3mmの観察円を設定し、観察円内の血管をその形態と走行から動脈、静脈および毛細血管に分類した。 それぞれの血管壁周囲の細胞について、形態学的特徴から非脱顆粒および脱顆粒した細胞の2種類に分け単位面積当たりの細胞数を計算した。統計学的解析にはWilcoxon検定を用いた。 その結果、それぞれの血管周囲における脱顆粒した細胞数は動脈(対照群0.8 cells/mm3、刺激群 5.4 cells/mm3)、 静脈(対照群2.5 cells/mm3、刺激群 7.6 cells/mm3)および毛細血管(対照群 5.1 cells/mm3、 刺激群 20.2 cells/mm3)であり、 いずれの血管周囲においても、 対照群に比べ刺激群では、 脱顆粒している細胞数が有意に増加していた。 平成25年度の研究により、三叉神経領域への慢性的侵害刺激がマウス脳硬膜肥満細胞の脱顆粒を引き起こす現象が観察された。この結果より、顔面に分布する三叉神経線維に侵害刺激を加えると脳硬膜において神経原性炎症が認められることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、顔面および脳硬膜の侵害刺激に関係する三叉神経線維は三叉神経節内における同一の神経細胞に収束するかの検討を目的の一つとしていた。このため、顔面の三叉神経支配領域に逆行性神経軸索トレーサーDiI、脳硬膜に逆行性神経軸索トレーサーFluoro Gold (FG)を投与しマウス三叉神経節神経細胞におけるこれらのトレーサーの共存を検討した。その結果、脳硬膜に投与したトレーサーFGの三叉神経節神経細胞における集積を認めたがその程度が少なく、顔面からの三叉神経線維を介した細胞との共存の評価が困難であった。このため平成26年度は、トレーサーの種類を変更し再実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように平成26年度は、顔面および脳硬膜の侵害刺激に関係する三叉神経線維の三叉神経節神経細胞内における局在について再検討を予定している。しかし、トレーサー集積の程度などにより十分に評価できない 場合は、三叉神経節と副交感神経の神経節である翼口蓋神経節の関係の検討への変更を追加することを考えている。硬膜と同様、翼口蓋神経節にも三叉神経節に由来するcalcitonin gene-related peptidesやsubstance Pを含有する神経線維が分布している。しかしこれらの神経線維とその受容体の局在については明らかにされていない。近年翼口蓋神経節の刺激が片頭痛や群発頭痛に効果を示すことが報告されている。このため本研究課題の大きな目的である「三叉神経の侵害刺激が関連する領域に及ぼす影響」にそい、翼口蓋神経節に分布する三叉神経線維の関係を調べることは重要であると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は免疫化学染色に使用する一次抗体の種類がすくなかったが、平成26年度は多くの一次抗体を使用する必要があるため、次年度使用額が生じた。 今年度はトレーサーも用いた再検討および脳硬膜に加え翼口蓋神経節における免疫組織染色も施行する。この臍、トレーサーおよび一次抗体購入費として使用する。
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