研究課題
基盤研究(C)
我々は、これまでに神経障害性疼痛モデルマウスの脊髄後角後シナプス肥厚部(postsynaptic density;PSD)画分を用いたプロテオミクス解析で有意に増加する分子としてNeuropathic Pain Related Protein-A,-B (NPRP-A、NPRP-B)を見いだした。これら2分子には分子機能に関する報告がないことから、本研究ではNPRP-AとNPRP-Bの機能を明らかにし、慢性疼痛時に生じるシナプス可塑性の機序解明を目指すものである。まず、慢性疼痛モデル発症における当該分子の関与を明らかにすることを目的としノックアウト(KO)マウスを作製した。このKO マウスを用いてin vivo解析のみならず、in vitroでの機能や、相互作用を明らかにし、これら分子によって調節される痛みの発症と慢性化機序の解明を目指している。平成25年度では、KO マウスを用いて神経障害性疼痛モデルとしてSpared nerve injury (SNI)モデルの作製および炎症性疼痛モデルとして足背部への完全フロインドアジュバンド(CFA)投与をおこなった。NPRP-A KOマウスでは、野生型マウスに比べ神経障害性疼痛におけるアロディニアと炎症性疼痛における痛覚過敏が有意に抑制されることをvon Frey テストとプランターテストにより明らかにしている。さらに、神経障害性疼痛におけるアロディニアはモデル作製の40日経過後も持続していた。他方、NPRP-B KOでの効果はNMRP-AのKOに比べ少なく、有意差は認められなかった。次に、NPRP-Bの組織内局在を解析するための、特異的な抗体の作製を包括脳の抗体作製支援を受けて実施した。合計7抗原14動物でのトライアルの後、特異性のある抗体の作製に成功した。来年度は、本抗体を使用した解析を予定している。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の解析において、特異的な抗体作製も終了し予定の解析が開始している。さらに、26年度に予定している脊髄後角でのコンディショナルKO作製のためのドライバーマウスとの交配も開始している。そのことから、現段階では概ね順調に伸展している。
in vitroの解析として、当該分子のKOマウスを使用した初期培養細胞の系を立ち上げる。それらの細胞を用いた解析の実施、および直接的な相互作用分子をプロテオミクスの手法を用いての探索により、本分子のシグナルカスケード中での位置づけ、機能的相互作用分子について解析する。現時点では本分子内におけるどの領域が機能的相互作用に必要であるかを明らかにはできていない。その事から、一次構造から予想されるドメインあるいは、機能的配列部位を含むGST融合タンパクを作製し、アフィニティー精製によって、相互作用分子の探索を実施する。さらに、25年度に作製した抗体を用いた免疫沈降などで、疼痛モデル時での相互作用分子の変化についても解析をすすめる。さらには、KOマウスとの機能的複合体との比較によって、当該分子が機能的複合体形成に与える影響についても明らかにすることを目指す。
コンディショナルノックアウトマウス作製の為の交配に伴う飼育ケージの増加に必要な費目としていたものが、予定よりやや交配が遅れていることから、その分の予定していた費目を次年度に使用予定である。コンディショナルノックアウトマウスの作製に関わる飼育規模の拡大に伴うマウス飼育費とする予定である。
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