研究課題/領域番号 |
25460729
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
片野 泰代 関西医科大学, 医学部, 講師 (60469244)
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研究分担者 |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / プロテオミクス / 脊髄後角 / シナプス |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛など慢性疼痛疾患で生じるシナプス可塑性の機序解明を目的とし、神経障害性疼痛モデルマウスの脊髄後角後シナプス肥厚部(postsynaptic density;PSD)画分のプロテオミクス解析を実施、増加した2分子をNeuropathic Pain Related Protein-A,-B (NPRP-A、NPRP-B)と名付け、KOマウスを作製した。 本申請ではKOマウスを対照とした解析から、神経障害性疼痛における変化を野生型マウスと比較することによって、本分子の関与を明らかにするとともに病態生理学的な意義について明らかにするものである。 昨年度、NPRP-Aの特異的な抗体作製を行っており、本年度では本抗体を使用した解析を実施した。当該分子は大脳皮質や海馬に加え脊髄後角で発現していることがわかった。さらに、脊髄後角では疼痛の伝達に重要であるII層に限局して発現することが、IIi層のマーカー蛋白であるIB4との共染色で示された。さらにNPRP-Aシグナルは、シナプスのマーカー蛋白であるPSD-95あるいはsynaptophysinと共局在し、アストロサイトのマーカー蛋白であるGFAP陽性細胞では認められない事がわかった。このことから、NPRP-AはII層で神経細胞のシナプス部に発現することが明らかになった。 さらには神経障害性疼痛モデル作製7日後の脊髄後角では、NPRP-Aの発現量が有意に増加することがわかった。これらの結果から、NPRP-Aは神経障害性疼痛の伝達に重要な分子であることが示唆され、当該分子の機能をさらに明らかにすることによって、慢性疼痛の発現維持機構を明らかにすることが期待できる。またすでにKOマウスを使用した神経障害性疼痛モデルマウスでは、機械的アロディニアが有意に抑制されていることから創薬の新規標的分子としての可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販の抗体はすべてKOマウスで野生型マウスと同等のシグナルであり、非特異的なシグナルしか見えてはいなかった。本年度の成果で我々は作製した抗体を使用し、また染色条件の検討などから特異的なシグナルを脊髄後角で検出することに成功した。この検討により、本解析を大きく発展させたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NPRP-Aは、Y1472GluN2B-NMDA受容体のシグナルの下流で発現量が増加する分子としてプロテオミクス解析で同定した分子である。しかしながら、本分子機能は明らかではなく、NMDA受容体をはじめとする神経障害性疼痛関連分子との機能的相互作用などについて、全く明らかにはなっていない。そのことから、受容体あるいはキナーゼなどの選択的阻害剤を用いて当該分子の位置づけについてin vivoで解析することを検討している。さらに、これらの機能的相互作用については、スライスあるいは初期培養細胞を用いた解析でも明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度よりコンディショナルKOマウスの作製も検討していたが、使用したドライバーマウスでは個体差を伴い脳でも組換えが生じ、脊髄後角でのコンディショナルKOマウスを作製することができなかった。コンディショナルKOの交配維持に関わる費用としていたが、交配を中止し、in vitroの解析に切り替えた事により、飼育費用としていた費目を次年度の解析に使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
異なるドライバーマウスの購入と、初期培養に必要な試薬費とする予定である。
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