研究課題/領域番号 |
25460730
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
中塚 映政 関西医療大学, 保健医療学部, その他 (30380752)
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研究分担者 |
谷口 亘 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20453194)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 脊髄電気刺激 / パッチクランプ法 / in vivo パッチクランプ法 / 外向き電流 / 抑制性シナプス電流 / slow IPSC / outward current |
研究概要 |
脊髄電気刺激が脊髄膠様質ニューロンにどのような影響を与えるか、ラット脊髄スライスにホールセル・パッチクランプ法を適応して、解析を行った。膜電位を-50mVに固定して、保持膜電流の変化に注目した。単極の刺激電極を用いて、脊髄後角を局所的に20Hzで20回(刺激強度:0.3~1.0mA、刺激持続時間:0.4ms)反復刺激すると、約30%のニューロンにおいて、緩徐な抑制性シナプス後電流(slow IPSC)が発生した。脊髄電気刺激によって生じたslow IPSCの平均の振幅は約60 pA、平均持続時間は約60秒であった。また、脊髄電気刺激を5-10分間隔で行っても、slow IPSCの振幅に変化は無かった。脊髄スライスにおいて確認することができた脊髄電気刺激によって発生するslow IPSCは脊髄電気刺激による鎮痛機構にとってきわめて重要な現象であると考えられるが、実際のin vivo標本でも同様な現象が見られるか不明である。そこで、引き続きin vivo標本においても同様に脊髄電気刺激により脊髄膠様質ニューロンからslow IPSCが記録できるか検討を行った。電気刺激は記録ニューロンの髄節レベルより高位の脊髄後索の軟膜・くも膜直上に電極を接するような形で前もって設置しておいた。in vivoパッチクランプ法にて、脊髄電気刺激をスライスと同様の条件で反復刺激で行なった。この刺激によりslow IPSCを示すニューロンが存在したが、その振幅はスライス時より小さく約10pA程度であった。また、細胞膜の脱分極を示す内向き電流が発生したニューロンも存在した。これは記録細胞に投射する後根に電気刺激がおよんで一次求心性線維からのシグナルとなった可能性があると思われる。現在、実験上の最適な刺激条件、電極の設置位置を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度のラット脊髄スライスにホールセル・パッチクランプ法を適応した解析により、脊髄電気刺激が脊髄膠様質ニューロンの細胞膜の過分極を示すslow IPSCを発生させることを示すことができた。このことは脊髄電気刺激が脊髄膠様質ニューロンに対して、疼痛情報を抑制する方向に働くことを示している。さらに本年度は生体に近い環境下であるin vivoパッチクランプ法においても同様なslow IPSC現象がスライス実験よりも弱い反応であるものの発生することを示すことができた。これらの結果は、実際、臨床応用されていながら、いまだ鎮痛機序が明らかにされていない脊髄電気刺激療法が脊髄後角レベルで脊髄内鎮痛機構を活性化することによって鎮痛効果を得ているものであることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は本年度で得られた脊髄電気刺激によるslow IPSCの発生機序を薬理学的に解析していく。具体的にはパッチクランプ法により、いくつかのslow IPSCを起こし得る脊髄膠様質細胞の受容体をリストアップして、これらの拮抗薬にてslow IPSCの発生を抑制できるかなどを解析する。さらに本年度得られた脊髄スライスとin vivo標本で得られた結果の差異に関して、解明を進めたい。in vivoパッチクランプ法にて電極の設置位置(脊髄後角と後索)、電流の大きさ・頻度・反復条件などを様々に変えて、slow IPSCが大きく、長時間持続する最適な刺激条件を求めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究結果は順調であるが、研究結果により当初計画していた内容に一部変更が生じ、購入予定物品が未購入になっているため。 平成26年度の実験計画に沿って研究をすすめる。動物代・薬品代等に使用する予定である。また研究成果に応じて、学会等での研究成果発表に研究費を使用する予定である。
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