研究課題
ラット脊髄横断スライスにパッチクランプ法を用いて、記録ニューロン近傍の脊髄後角に局所電極を留置し、20Hzで20回(刺激強度:0.3~1.0mA、刺激持続時間:0.4ms)反復刺激すると約30%のニューロンにおいて緩徐な抑制性シナプス後電流(slow inhibitory postsynaptic current : slow IPSC)を認めた。脊髄電気刺激によって生じたslow IPSCの平均の振幅は約60pA、平均持続時間は約60秒であった。薬理学的な解析からこのslow IPSCはG蛋白質共役型内向き整流性Kチャネル(GIRKチャネル)を活性化することにより発生するものであることが判明した。脊髄後角ニューロンではいくつかのの神経伝達物質によってslow IPSCが誘発されることが知られているが、種々の神経伝達物質阻害薬を用いて解析を行ったところ、非選択的ソマトスタチン受容体阻害薬であるcyclo-somatostatin存在下でのみ、阻害作用を認めた。これらの結果から、電気刺激によって遊離するソマトスタチンが脊髄後角ニューロンのソマトスタチン受容体を活性化し、その結果、G蛋白質を介してGIRKチャネルを活性化することが脊髄電気刺激療法の機序に関与していると考えられた。次に、同様の電気刺激をin vivo環境で行い、観察した。電気刺激は記録ニューロンの髄節レベルより高位の脊髄後索の軟膜・くも膜直上に電極を接する様な形で刺激を行った。in vivo パッチクランプ法ではスライス実験と同様にslow IPSCを示すニューロンも存在したが、その振幅は小さく約10pAであった。そこで、最適な刺激条件を探索した結果、slow IPSCが最も大きく得られる最小の条件は20Hzで150回、刺激強度:10mA、刺激持続時間:0.4msであった。
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Molecular Pain
巻: 12 ページ: 1-12
10.1177/1744806916644927