研究課題
基盤研究(C)
対象コホートの追跡も6年を超え、追跡研究が可能と成った。臨床データと死亡との関連を追跡研究で調べ、血漿アルドステロン レニン活性比(ARR)低値が死亡の危険因子となっているという知見を得た。以下に概説する。【目的】レニン アンギオテンシン アルドステロンシステム (RAS)指標である、血漿アルドステロン(Ald)/レニン活性(PRA)比(ARR)の高値は原発性アルドステロン症(PA)のスクリーニングに用いられているが、ARRは高値でなければ問題はないのだろうか?RASは、組織レベル (Local) でも発現しており、Systemic RAS としての大血管障害(CVD) への関与に加えて、local RASとして、癌、糖尿病、肥満、炎症 等の種々疾患、病態と関連すると考えられている。そこで、私達はARRと全死亡、CVD及び癌による死亡との関連を一般住民対象の追跡調査より検討した。【方法】対象:山形県高畠町住民検診参加者(2004―2006年)で、Ald、PRA共に測定した者1,310人(男/女:588/722;年齢:65.9±9.8)。追跡調査:死亡、及び、死因を、2011年末まで追跡(中央値:2,691日、64名が死亡)。ARRは3分位し、死亡との関連を、Kaplan-Meier生存曲線法、Cox比例ハザード法で、性別、年齢、高血圧治療の有無で補正の上解析した。死因別解析には、χ2乗解析を用いた。【結果】1. ARR低値群は高値群に比して有意に全死亡が多かった(2.33, 1.14-4.76)。2.全死亡の危険因子となるARRのカットオフ値をROC曲線から求めると、72となった(AUC: 0.656)。3. 死因別解析では、ARR低値群は 高値群に比して、CVD (1.83 vs 0.23%, p=0.019)及び癌 (2.98 vs 0.92%, 0.028)の死亡率が有意に高かった。【結語】ARR低値は全死亡、CVD及び癌死亡の危険因子と成っていた。ARR高値ではPA疑うが、低値にも注意を払う必要があると思われた。
2: おおむね順調に進展している
追跡データも順調に整っており、臨床データとの関連解析も順調に進んでいる。遺伝子型解析はGWASで終了しており、こちらの解析にも着手しており、研究計画全体としては概ね順調に進展していると思われる。
死亡率をターゲットとした、種々因子の解析を今後も続けて行きたい。現在は、脂質異常及びその治療の有無が死亡にどのように関連しているかを解析中であり、その他の因子(高血圧、糖尿病、等)に関しても同様に解析する予定である。加えて、遺伝子型の違いが、これら得られた結果に及ぼす影響を解析し、遺伝子環境因子相互作用を明らかにし、遺伝子型に基づいた疾患治療、オーダーメイド医療に繋げて行きたい。
他の研究費の充当でまかなえた検診に置ける調査費用、及び、旅費に充てる。
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Mol Biol Rep
巻: in press ページ: in press
10.1007/s11033-014-3171-0
PLoS One
巻: 13 ページ: e83725
10.1371/journal.pone.0083725. eCollection 2013