研究実績の概要 |
本研究では、茨城県某市(40歳以上人口65,000人)における40歳以上の住民を対象として、健診時に心・腎・眼連関に関わるバイオマーカーに関する疫学調査を約1万人に実施し、新しいバイオマーカーが従来の循環器疾患の危険因子、栄養摂取状況、及び社会経済心理要因とどの程度強く関連しているかを定量的に分析するとともに、構築したデータベースをベースラインとして、この集団を10年以上追跡することにより、これらのバイオマーカーが真に疾病(脳卒中や虚血性心疾患に加えて心不全、腎疾患、眼疾患)の発症と関連しているか否かを明らかにすることを目的とした。平成28年度までに11719人についてデータ収集を行い、当初予定していた人数(10000人)を達成した。高血圧、糖尿病、心電図異常、腎機能低下、眼底異常について、NT-proBNPとの関連を断面で分析した。NT-proBNPと高血圧との間には弱い相関(対数変換1標準偏差増加当たり性年齢調整オッズ比[95%信頼区間]=1.18[1.13-1.24])が、NT-proBNPと糖尿病との間には弱い負の相関が認められた(0.93[0.87-0.99])。NT-proBNPと心電図異常(3.41[3.03-3.83])、腎機能低下(1.41[1.33-1.50])、眼底異常(1.45[1.28-1.64])との間にも有意な関連が認められた。これらより、心不全患者のバイオマーカーとして用いられるNT-proBNPが、健常者において腎機能や眼底所見と連関し、心・腎・眼の末梢臓器変化を総合的に反映するバイオマーカーとしても有用であることが示された。
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