研究課題/領域番号 |
25460742
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 真奈美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70250248)
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研究分担者 |
笹月 静 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 部長 (50392337)
松田 智大 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 室長 (60370954)
野田 光彦 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 部長 (90237850)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん / 糖尿病 / 人口寄与割合 / 保有率 / 相対危険度 |
研究実績の概要 |
初年度である25年度には、本研究で必要となる1990-2030年までのわが国の糖尿病保有率を推計した。これまでの国内の健常人を対象とした研究・調査から、一定の糖尿病診断基準を用いた研究を抽出し、糖尿病保有率の年次推移をメタ回帰分析により求めた。その結果、糖尿病保有率は、どの年齢群においても、男性より女性で高く、年齢調整保有率は、2010年には男性9.9%(500万人)、女性6.1%(330万人)、2030年には男性13.1%(630万人)、女性で6.7%(350万人)と推定され、特に男性において次の数十年の間に糖尿病保有率が上昇することが示された。この結果は専門誌に受諾された。(Charvat H, Goto A, et al. J Diabetes Invest, in press) 平成26年度には、1)2010年の性年齢群別がん罹患数・死亡数とAPCモデルにより推計した2030年の性年齢群別がん罹患数・死亡数、2) わが国における性年齢群別糖尿病保有率推計値、3) 糖尿病による関連各部位がんのサマリー相対危険度、を用いて、2010-2030年の日本人における糖尿病によるがん罹患・死亡のPAFを算出した。 この結果、20歳以上では、2010年から2030年までの間に全がん罹患で31.5%、全がん死亡で8.6%の増加がみられた。2010年から2030年の間の糖尿病のがんに対するPAF変化については、全がん罹患のうち糖尿病によるものが1.3%から1.7%へ増加し、2030年には17,947名のがん罹患が糖尿病に関連して発生すると見込まれた。 糖尿病のがんに対するPAF増加の主な要因として、人口の高齢化が挙げられる。20歳から59歳までの丸全体及び各部位がんのPAFに変化は見られなかったが、60歳以上の男性の全がんにおいてPAFの増加が認められた。平均余命の延伸により全人口における60歳以上人口の割合が増加することで、高齢者の糖尿病有病率が上昇し、高齢者の糖尿病関連がん罹患・死亡が増加するという可能性が考えられる。 現在、この結果については論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初の予定通り、第1-2年度の目標を達成しており、既に本研究の最終達成目標である人口寄与割合推計に関する論文についての投稿準備段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度の当初予定通りに研究を遂行していく。 すなわち、25年度に実施、あるいは収集した各推計の結果を用いて、2010年及び2030年時点における日本人のがんの罹患及び死亡に対する人口寄与割合(PAF)を算出した。具体的には、1)25年度に推計した、1990年から2030年のわが国における性年齢群別糖尿病保有率推計値、2) 2010年及び2030年におけるがんの性・年齢群別罹患数及び死亡数推計値、3) 糖尿病による関連各部位がんのサマリー相対危険度、を用いて、26年度には2010年-2030年の日本人における糖尿病によるがん罹患・死亡の人口寄与割合を、各部位ごとに算出した。さらに各部位ごとの罹患・死亡数と人口寄与割合を乗じて寄与している数を算出し、これを足し合わせることにより、がん全体において寄与している数を求め、この数をがん全体数で割ることにより、がん全体における人口寄与割合を算出した。 この結果について、論文化を既に進めており、本年度中に専門誌への受諾と公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文化投稿に関わる作業の一部が、年度末と次年度にまたがっている。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された研究費については、予定されていた論文投稿及び掲載、発表などに結果公表に係わる諸費用に支出する予定である。
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