本研究は地域一般男性住民の睡眠呼吸障害の頻度を明らかにするとともに、関連する因子について検討を行うことを目的として実施した。 本研究はSESSAII研究(滋賀県草津市の40~79歳の住民から住民基本台帳を用いて年齢層化無作為抽出し潜在性動脈硬化に関する研究への参加協力依頼を行ったSESSA研究の追跡研究)の調査協力者の667名に調査協力依頼を行い544名(協力率82%)より同意を得て追加検査を実施した。睡眠呼吸障害はフクダ電子FM800(心電図・血圧・動脈酸素飽和度測定装置)を用いた睡眠時酸素飽和度の測定及びEpworth sleepiness scale(ESS)(過眠症スクリーニング用質問票)による問診を実施した。睡眠時無呼吸の簡易スクリーニングで用いられる3%ODI≧15(3%ODI[Oxygen Desaturation Index]は睡眠時に酸素飽和度が3%以上低下し、2分以内に元の値まで回復した場合をdipと定義し、dipの1時間当たりの回数を示す指標である)を睡眠呼吸障害と定義した。データに欠損がない526名を対象に解析した。また2016年の年齢階級別日本人人口を用いて中高年男性の有所見率を推計した。 睡眠呼吸障害がある者は133名(25%)であった。50歳から89歳までの日本人男性の28.9%に睡眠呼吸障害があることが推測された。この調査集団では睡眠呼吸障害がある者は若く、肥満があり、空腹時血糖が高値を示した。診察室血圧、HDLコレステロール、非HDLコレステロールは有意な差は認めなかった。 本研究では中高齢の一般地域男性住民では睡眠呼吸障害の有所見率が3割に達する可能性が示唆された。睡眠呼吸障害に対する適切な公衆衛生上の対策と合わせて、従来の3%ODI値を用いた有所見者率より本集団で高い要因についての検討が必要である。
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