nano-fluidic multiplex PCRを用いた肺炎球菌の血清型決定法を確立し、ベトナムの小児における咽頭ぬぐい液をもちいて有用性を確認した。これをもとに、国内における成人肺炎の前向きサーベイランスの喀痰検体を用いて、成人における肺炎球菌性肺炎の血清型を検討した。 喀痰は二年間で約2600検体収集し、ニューモリジン遺伝子のスクリーニングPCRで陽性となった検体のみを対象とした。この検体をもちいて、血清型を検討した。スクリーニングPCRの陽性率は17.2%~21.5%であり、若干施設間で差がみられたが有意なものではなかった。年齢別では70%が65歳以上であり、62%が男性であった。この技術を用いた研究の特徴的な実績としてあげられるのが複数血清型の検出である。従来の培養法では1種類の菌株しか釣菌していなかったのでわからなかったことだが、本法により一人の患者から複数の肺炎球菌の血清型が検出されることがわかった。スクリーニング陽性516検体のうち複数血清型が検出されたのは205検体であり、その頻度は39.7%であった。DNA量を検討したところ、一番目の菌と二番目の菌は有意差をもって多かったが、二番目、三番目、四番目では有意差がなかった。 これまでに知られていない「肺炎球菌複数血清型が原因と思われる肺炎」の実態を把握することができた。測定したDNA量の、臨床的意義やワクチン効果に対する考えかたを含めて考察し、論文として発表する準備を行った。
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