研究課題/領域番号 |
25460762
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林田 雅希 長崎大学, 保健・医療推進センター, 准教授 (70264223)
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研究分担者 |
田山 淳 長崎大学, 障がい学生支援室, 准教授 (10468324)
西郷 達雄 長崎大学, 保健・医療推進センター, 研究員 (50622255)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | うつ病 / 予防介入 / 集団認知行動療法 / パーソナリティ / 大学生 |
研究実績の概要 |
平成26年度入学時のTCI-R短縮版提出者は,1657名であった。そのうち「損害回避(HA)」得点が78点以上だったのは269名で,本研究の説明会に参加者した者は40名で,文書での同意が得られた者は35名(男18,女17)となり,目標数40名を下回った。そこで今回も,G-CBT介入群と非介入群の比率を2:1とし,無作為割り付けの結果,G-CBT介入群23名(男11,女12),非介入群12名(男7,女5)となった。G-CBTは,6月~7月に実施し,ほぼ全8セッションを終了できたのは20名であった。3名は約半分以下の参加であった。介入6か月後の面接と測定を両群ともにH27年1月-2月に実施し,追跡率は約6割(G-CBT介入群16名,非介入群6名)であった。 平成25年度入学の対象者について,1年後の追跡率は,介入群で18名中14名(78%),非介入群で10名中6名(60%)であった。 G-CBT介入6か月後に追跡できた平成24年度,25年度入学の介入群25名について介入開始時と6カ月後を比較したところ,ポジティブな自己認知が有意に上昇し,ネガティブな自己認知および自動思考の自己否定と対人関係脅威度が有意に低下していた。G-CBTによって高HA者の認知面および気分面・身体面(抑うつ症状,不安症状,健康感)が改善され,6ヶ月後においても介入効果が持続することが示唆された。 介入群についてのみの解析ではあるが,平成25年度に平成23年度,24年度入学の対象者を加えた34名について介入1年後を介入開始時と比較したところ,6か月後と同様にポジティブな自己認知が有意に上昇し,ネガティブな自己認知が有意に低下しており,介入1年後も持続していた。また,うつ病評価尺度BDI-IIの得点も介入開始時に比べて有意に低下していたことから,G-CBTが高HA者のうつ予防に効果的であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参加同意取得者数は,初年度と2年度を合わせて当初目標の約7割であった。週間スケジュール上参加しやすいグループ数とするため介入群の対象者数を多く割り付けたことと非介入群の追跡率が低かったことから,非介入群の有効なデータが目標の半数程度と少なく,2群間での予備的な比較解析には至らなかった。 心拍変動測定はプログラム導入したものの,G-CBTセッションまでに間に合わなかったため,平成26年度入学者の測定は断念した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度と平成26年度を合わせると参加者数は,介入群で40名となったが,非介入群は22名に過ぎず,目標数をかなり下回っており,追跡率も介入群に比べて低くなっている。そこで,研究期間を1年間延長し,平成27年度入学者を対象に加えて,非介入群を目標数(40名)に近づける。研究期間の1年間延長と平成27年度入学者を対象者として追加することについては,既に,長崎大学医歯薬学総合研究科の倫理委員会に研究等の変更を申請し,承認を得た。また,解析に支障が生じないようにするために,非介入群へのサポートを徹底し,1年後の追跡率を上げる。さらに,平成27年度入学者だけでも心拍変動測定を実施する。 平成25年度入学者の介入群のデータについては,本研究課題開始以前の非無作為化オープン試験として実施した平成23年度,平成24年度の対象者と合わせて解析した結果を論文化して公表する。 予備的にではあるが,生物学的ストレス指標である唾液試料のクロモグラニンAの測定結果も含め,平成25年度入学者と平成26年度入学者の介入半年後のデータの介入群と非介入群の比較解析を行い,平成27年度中に中間発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加同意取得者数は,初年度と2年度を合わせて当初目標の約7割であったため,質問紙代や謝金が予定を下回った。また,発表した国際学会が近距離の福岡市での開催であったため,旅費が当初予定よりかなり少額の出費で済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度入学者を対象に追加して参加同意取得者数を増やす。そのため,研究期間の1年間延長を申請する。また,唾液中クロモグラニンAの測定単価が予定よりも1.5倍高くなっており,成果を発表しようと考えている国際学会の開催地は欧州となる可能性が高い。さらに,論文投稿関連の費用としても使用する予定である。
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