研究実績の概要 |
2016年度は、ベトナムハノイにおいて20代~80代の一般女性145名を対象とし、喫煙習慣を含む生活習慣の予備的調査を行った。ベトナム女性の喫煙者は145名中3名(2%)で、日本(鹿児島県)の対照群の喫煙率4%よりも低く、最近、ベトナムで実施された他の調査結果(1.9% Trieuら2017)とほぼ同じであった。3名の喫煙者の年齢分布は33歳~51歳で、いずれも既婚者である。ベトナム女性の喫煙率は非常に低く、乳がんのリスク要因となっている可能性が低いことが示唆された。これはTrieuらの報告とも一致している。 一方、日本の症例については前年度に引き続きホルモン受容体(ERおよびPgR)、HER2の発現状況を調べ、閉経後女性に限定してこれらの蛋白の発現別に、喫煙による乳がんリスクへの修飾作用の有無を検討した。年齢、BMIおよび出産の有無を調整した上で、喫煙による乳がんリスクを検討した結果、HR陰性(ER、PgRともに陰性)の現在喫煙者ではオッズ比が2.9(95%信頼区間:0.5, 16)、HR陽性群(ER、PgRのどちらかが陽性)では4.4(95%信頼区間:1.1, 15)と、HR陽性群においてオッズ比が高い傾向を認めたが有意な差ではなかった。また、HER2陰性群の現在喫煙者のオッズ比は3.9(95%信頼区間1.2, 13)、HER2陽性群は5.3(95%信頼区間:0.9, 32)であり、こちらも有意差はなかった。 非喫煙女性において受動喫煙と乳がんリスクを検討したところ、HR陰性群はオッズ比3.7(95%信頼区間:1.2, 11)、陽性群オッズ比3.9(95%信頼区間:1.7, 8.5)であった、また HER2陰性群では、オッズ比4.0(95%信頼区間:1.8, 8.8)、HER2陽性群でオッズ比4.5(95%信頼区間:1.2, 17)と蛋白発現の有無に関わらず、有意な関連を認めた。
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