研究課題/領域番号 |
25460769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
鷲見 紋子 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10363699)
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研究分担者 |
ゴッシュ ソウビック 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30597175)
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染症 / 結核 / インフルエンザ / 時系列解析 / 空間疫学 / 予測解析 / サーベイランス / 国際情報交換 |
研究概要 |
前年度は、2006年1月~2010年12月における、中国・武漢市の武漢疾病対策予防センターで収集された、喀痰塗抹陽性例および陰性例の週毎報告数に時系列解析を適用し、結核の時間的な流行動態について詳細に調べた。時系列解析として、短い時系列からでもその周期構造を詳細に抽出できる最大エントロピー法(Maximum Entropy Method; MEM)に基づくスペクトル解析、および最小2乗あてはめ(Least Squares Fitting; LSF)解析を実行した。 MEMスペクトル解析から得られたパワー・スペクトル密度では、喀痰塗抹陽性例および陰性例の場合とも、最も支配的なスペクトルピークが1年周期に観測された。喀痰塗抹陽性例の場合は、6ヵ月周期にも支配的なスペクトルピークが観測された。スペクトル解析の結果に基づいたLSF解析の結果、喀痰塗抹陽性例および陰性例の場合とも、流行が春に観測された。喀痰塗抹陽性例の場合は、流行が夏にも観測され、年2峰性であることがわかった。 喀痰塗抹陽性例の夏のピークは、インフルエンザの流行のピークと同時期に観測され、喀痰塗抹陽性例の流行がインフルエンザの流行と相関関係があることが示唆された。得られた結果を査読付学術誌に発表した(Epidemiology and Infection, 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の研究結果をまとめた論文に関して、アクセプトされるまでにレフリーとのやりとりに想定外の時間を必要とし、前年度に予定していた研究計画の一部を実行することができなかった。しかし、この遅れは、今年度に十分に達成することが可能であるものである。
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今後の研究の推進方策 |
1.今年度の研究対象地域であった武漢市を含む、中国・湖北省の12直轄市で収集された、結核とインフルエンザの患者発生数の時系列データを対象に、前年度用いた解析方法を適用し、包括的な時系列解析を行う。得られた結果を用いて、結核とインフルエンザの流行の相関関係を測定する。 2.上記「1」の時系列解析の結果を土台にし、結核とインフルエンザ患者発生数の予測解析を実行し、患者発生数の未来の予測値を定量的に示す。予測解析法には、本研究の研究代表者が過去の論文(査読付)で提起した方法を用いる。 3.結核とインフルエンザの流行伝播の地理的変動を視覚化するために、湖北省・12直轄市の地域データに基づく地理的相関分析方法として、空間疫学の分野で広く普及している統計ソフトウェアを用いる。 4.中国における予備的調査:中国の広大な領域における結核流行の全貌を明らかにする足掛かりとして、湖北省についての本研究計画を土台として、特別行政区である香港での予備的な研究を実施する。香港のデータは、研究協力者であるルオ・トンヤン(武漢疾病対策予防センター)の紹介を得て、香港中文大学から提供を受ける。 5.インドにおける予備的調査:インドは世界で最も結核患者が多く、中国・湖北省についての本研究計画および結果をインドに適用することは大変意義深い。そこで本研究の実施期間内に、共同研究先であるインド・コルカタについての予備的な研究を実施することを目標とする。 6.日本における予備的調査:日本国内では、年間3万人近くの人が新たに結核を発症し、日本の罹患率は米国の約5倍高い。日本では、1987年から、患者発生のデータが、毎月、保健所から厚生労働省を結ぶコンピュータ・オンラインにより集計されている。この集計データは、公益財団法人結核予防会結核研究所による年報として公表されており、本研究計画ではこのデータを用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に予定していた、中国のでの研究打ち合わせ・調査研究が、次年度に延期したために、旅費の一部を使用しなかったたため。 前年度に予定していた、中国のでの研究打ち合わせ・調査研究を今年度に行うため、前年度に割り当てていた旅費を用いる。
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