研究課題
平成26年度も前年度に引き続き、一般住民の健康情報時系列データを収集するために北海道S町において住民健診を夏季と冬季に実施し、延べ822名が受診した。2度以上健診に受診した住民のデータベースに今年度検査成績を統合した。つぎに、平成23年8月から平成25年12月末の住民の生死情報、狭心症、心筋梗塞、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血・その他の脳卒中)の発症とそれによる死亡、また悪性物死亡を登録した。発症者の一部は受診医療機関において、診断の確認を行った。予後判定者は1281名であった。今年度は時系列データより毎年の血圧変動性とその後の血圧上昇、高血圧発症(最終健診時血圧140/90以上、あるいは降圧療法開始)との関連を解析した。解析対象は住民検診受診者データベースのうち最初の健診実地時点で高血圧症、糖尿病、脂質異常者とそれらの治療者を除き5回以上の受診のあった男女482名(平均年齢68.3+-15.0歳)である。評価項目は年齢、BMI、SBP値、DBP値および測定されたSBP、DBPの平均値とそのSD、空腹時血糖値、トリグレイセリド値、LDL、HDLである。5年以上の健診成績のある482名のうち高血圧発症者は257名(53%)であった。高血圧発症は男性の割合が多く、最初の健診のBMI、SBP、DBP、TGが高血圧発症者で大であった。DBPのSDには差違が認められなかったが、SBPのSDは高血圧発症者が非発症者より大きかった(発症者16.3+-11.2, 非発症者9.4+-7.4mmHg:p<0.01)。高血圧発症従属変数としたロジステック回帰分析では性差、年齢、SBP、TG、に加えてSBPのSD値が独立変数として採択された。以上より毎年測定の血圧変動が多きものほどその後の高血圧進展が多いことが確認された。次年度は糖尿病発症および心血管疾患発症と健診時データの時系列関連を検討する。
2: おおむね順調に進展している
健診成績集積と発症登録は前2年間でほぼ計画通りに進行している。またデータ収集に関しては昨年度行えなかった高感度CRP、酸化ストレスマーカー、微量アルブミンなどの項目をデータベースとして整理した。解析は従来の方法による解析を終了し、血圧変動性がその後の高血圧発症に関与することを示し、国内外これまでの報告を支持する成績を得た。
平成27年度も当初計画通りに北海道農村部において糖尿病、高血圧、心血管疾患発症に関するリスク要因の検査成績を収集する。これら健診データをこれまでの時系列データに統合する。また発症登録、生命予後追跡も継続し時系列データベースと統合することにより、血糖変動性、血圧変動性と高血圧・糖尿病発症、心血管疾患発症・死亡との関連を検討、時系列変化と特性と疾患発症・死亡との関連を解析する。これらの成績は平成26年度に解析した結果とともにまとめ、公開し、論文発表する。
本年度22876円の残金が生じた。これは当初計画で予定していた健診のための旅費支出が不要となり、代わりに前年度より繰り越されていた研究費を加え、特殊検査測定代金等に充当したが、その支払いとに差額が生じたためである。
差額の22876円は、次年度特殊検査費用として充当する。
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Cardiovascular Diabetology
巻: 13 ページ: 1-9