今年度も一般住民の健康情報時系列データを収集するために北海道S町において住民健診を実施(683名)し、健診データベースに検査成績を統合した。 今年度は、作成した時系列データから各種解析による高血圧発症予測能を検討した。平成16年8月から26年12月までに連結された正常血圧者は826名(平均年齢57.6歳、男性43.0%)であった。検討した解析方法は、ROC曲線、ロジスティック回帰分析、CRT(Classification and Regression Tree)法であり、時系列データより毎年の血圧変動性と、高血圧発症との関連も解析した。評価項目は年齢、BMI、SBP値、DBP値および測定されたSBP、DBPの平均値とそのSD、空腹時血糖値、トリグレイセリド値、LDL、HDLである。 期間内の高血圧発症者は520名(63.1%)であった。CRTはBreimanらの方法に従い予測因子候補の中から適切な予測因子を選択し、分割値で二分岐することでclassifiaction Tree(決定木)を構築し事象の予測を行った。予測因子の選択及び分割値の算出に際しては、集団のバラツキの指標であるGINIインデックスを使用し、分岐毎にその集団のバラツキが最小になるようにモデルを構築した。ロジスティック回帰分析では、すべてのパラメーターを投入し、ステップワイズ法により最良モデルを選択した。ROC曲線では、すべてのパラメーターのROC曲線を算出し曲線下面積の最も大きいパラメーターについて比較検討を行った。高血圧発症予測の感度が最も高かったのがCRT(感度88%)で順にロジスティック回帰分析(78%)、ROC曲線(78%)であり、特異度は、CRTで48%であった。しかしながら上記の解析では血圧変動性は高血圧発症予測のいずれも有意な因子とならかった。CRTでは、予測因子の具体的な分割値を示す事で、より実用的な予測モデルの構築が可能であると考えられた。
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