研究課題/領域番号 |
25460774
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岡 檀 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 講師 (10649247)
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研究分担者 |
有田 幹雄 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 名誉教授 (40168018)
山内 慶太 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 教授 (60255552)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コミュニティ / 自殺予防 / ソーシャル・キャピタル / 子ども / 都市工学 / 地形 |
研究実績の概要 |
本研究は、自殺に影響する社会的要因のうち、人の生活基盤であるコミュニティの特性に着目し、自殺の危険を抑制する因子を見出すことにある。 徳島、青森、京都、奈良の4県17町村の住民約5,300名を対象とした質問紙調査の結果、自殺希少地域では、異分子への寛容、人物本位の他者評価、適切な援助希求、ゆるやかな紐帯といった要素が、自殺多発地域よりも強く現れていた。こうしたコミュニティ特性について学際的な議論を行うことを目的に、社会学、健康行動科学、土木学、都市工学などを専門分野とする研究者が、自殺希少地域である徳島県旧海部町(現海陽町)に集まり、町内の視察や住民との交流を行った。 先に挙げた、自殺希少地域に共通して強く現れる要素は、いわゆる“自殺予防”の所産ではない。短期の損得にとらわれず、合理的に行動し共存するという理念がコミュニティにおいて根づいており、住民らは成長の過程で、そうした行動様式を無意識に吸収していくと考えられた。調査を新たな段階に進めるべく、同町の関係者や共同研究者らと協議を重ねた。子どもが社会的スキルを会得する過程について、小学校高学年から成年に達するまでの約10年の追跡調査を行うことで町側の合意を得て、準備に着手した。 また、同町でフィールド調査を重ねた結果、町の空間構造特性がコミュニティ特性の醸成に影響しているとの仮説に至った。同町は、太平洋と小高い山にはさまれた狭い平地にある。密集した居住地の路地幅は極めて狭く、それら路地の交差が多い。ベンチ代わりとなる「みせ造り」という建築様式、「共同洗濯物干し場」や数多くの寺は、情報の集散機能を担っている。隣人間の接触や情報交換が日常的に促され、意図されないまでも、問題の顕在化が進みやすく、早期に発見されやすい構造になっていると考えられた。土木や都市工学の観点も入れて、町の空間構造を数値化する方法を模索することとなった。
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