本研究は、自殺に影響する様々な社会的要因のうち、人の生活基盤であるコミュニティの特性に着目し、特に自殺「希少」地域における自殺予防因子を明らかにすることで、自殺予防対策への示唆を得ようとするものである。徳島、青森、京都、奈良の4県17町村において、現地調査を行い、住民約5,300名を対象とした質問紙調査の結果、自殺希少地域では、異分子への寛容、人物本位の他者評価、適切な援助希求、ゆるやかな紐帯といった要素が、自殺多発地域よりも強く現れていた。こうした要素は、近代的な“自殺対策”の所産ではなく、数百年を遡る歴史の中で培われてきたことも明らかとなった。
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