研究実績の概要 |
子宮頸癌の至適検診制度を模索するため、住民検診(細胞診-HPV検査併用)をフィールドとして研究を行った。①細胞診ASC-USでのHPV検査トリアージの実態調査、②細胞診単独年と併用検診の比較、③細胞診単独と併用検診のコスト比較、④検診受診率上昇のための施策検討、等を行った。 ASC-US・HPV陽性群におけるCIN+(子宮頸部上皮内腫瘍以上)発生頻度と疾患構成分布がLSIL群とほぼ同じであることを示した(Asian Pac J Cancer Prev. 2019;20:81-85)。また細胞診単独年と比較は細胞診3万4千人、併用検診2万人の比較検討から、精検率は1.9%から4.3%と2.2倍に増加したが、CIN2+以上の年間発見数は2.8倍に上昇し、逆に精検受診者における正常者の割合(疑陽性率)は約40%減少した。併用検診でCIN1を含めると細胞診単独に比べ、多くの精検受診者を抽出するが、細胞診単独と比べてCIN2+の陽性反応的中率は上昇していることが示された。また3年単位でみると併用検診で総費用は30%上昇したが、CIN2+が数多く発見されているため、これを1名発見するコストは逆に25%減少した。コスト面からみても併用検診は利益があると考えられた(The 60th Annual meeting of the JSGO,Kyoto,Sep 14-16,2018)。検診率に関する研究では、複数種類の検診案内を作成し各々の受診率がどのように変化するかを検討した。検診案内にある程度の検診に伴うリスクを説明したとしても検診率が下がらないことを示した(Arch Public Health. 2015;73:7)。 検診の疫学的調査に加え、頸がん早期発見や予後に関するバイオマーカーなどの検出へ向けての基礎研究も並行して行ったが、最終的に検診に寄与するバイオマーカーの発見には至らなかった。
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