研究課題/領域番号 |
25460776
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60335510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HDL / リポ蛋白質 / 脂質異常症 / 脂質代謝 / 心臓病 / 炎症 / 酸化ストレス / 予防医学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では高密度リポ蛋白(high-density lipoprotein:HDL)の質的変化を反映する新規検査指標である酸化HDLを用い、高HDLコレステロール(HDL-C)血症の病態理解を深め、併せてHDLの質的管理について提案することを目的としている。今年度は、健診設定でのサンプリングから以下のような結果を得た。まず、血中HDL-C値が診断基準となっている主要な病態としてメタボリックシンドロームについて検討した。40歳以上の男性集団(252人、除喫煙者)を対象に、わが国の診断基準に基づいてメタボリックシンドロームを判定したところ74人が該当した。メタボリックシンドローム集団では、それに該当しない対照集団と比べてHDL-Cは低く(平均:49対60 mg/dL、p < 0.01)、HDL-C当たりの酸化HDLは高かった(平均:4.3対5.2、p < 0.05)。また、メタボリックシンドロームの基準項目の重積個数を考慮すると、このHDL-C当たりの酸化HDLは基準の重積個数と正相関した(相関係数:0.2、p < 0.01)。メタボリックシンドローム病態下にあるHDLは酸化変性の修飾を受けており、またそれは同シンドロームの重症度と関連する可能性が伺えた。HDLの質的管理におけるメタボリックシンドローム対策の重要性が示唆される結果と思われる。次いで、この男性集団(含喫煙者)において、高HDL-C血症のHDLの質を変え得る状態を検討した。高HDL-C血症(80 mg/dL以上)は18人にみられた。肝機能検査値のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の比較的高値(25 IU/L以上)の集団では、それよりも低値の集団に比べてHDL-C値は変わらないものの(平均:89対90 mg/dL)、HDL-C当たりの酸化HDLは有意に高値を示した(平均:2.5対4.0、p < 0.05)。肝臓は特に脂肪蓄積や酸化ストレス源の場として注目されており、HDLの酸化変性の修飾におけるliver healthの意義が示唆される。このようにHDLの質的管理に関する新知見の集積が進みつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本検討課題では、HDLの質的変化を反映する新規検査指標である酸化HDLを用いて、高HDL-C血症の病態理解を促進し、併せてHDLの質的管理について提案することを主目的としている。この達成のために、幅広いHDL-C値を持つ集団を登録し、その集団の臨床情報(生活習慣、臨床検査値、心臓病のような疾患の既往歴)を加味して検討することが重要である。これに適した集団の登録が進みつつある。また、酸化HDLの測定に加えて、HDLの質的変性修飾に対する生物学的側面を検出する測定系の構築についても検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、本検討課題の目的達成のための大幅な計画の変更は予定していない。引き続き対象者の登録に努め、データセットを確立していく。
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