近年、心筋梗塞・脳梗塞などの患者が急増しており、とりわけ、40~50代の発症が社会問題になっている。これらの疾病は、健康診断の項目の低密度リポタンパク質(LDL)や中性脂肪の量とは正の、高密度リポタンパク質(HDL)の量とは負の相関があるとされているが、心筋梗塞・脳梗塞の発症事例の中には、そのスクリーニングにひっかかっていないケースも多い。また、生活習慣と密接に関わっているとされているが、どのような因子がどのようにかかわっているかは明らかになっていない。我々は、生活習慣の違いにより、HDLの粒子に特殊な形態をもつものを見出した。HDLの質的解析により、脂質代謝のリスク予測ができる可能性がある。そこで、特殊なHDL形態について、生活習慣に潜む形態異常を示すリスク因子の解明、および、形態異常の生成メカニズムを解析することを目的とした。 HDL粒子の走査プローブ顕微鏡(SPM)解析により、異常形態を示す検体を見出した。異常形態群と正常群に分類して、生化学検査値と比較すると、生化学検査値の異常値と異常形態とに相関があることがわかった。また生活習慣との相関があることがわかった。中でも喫煙、食生活の乱れ、運動不足が因子であることがわかった。 さらにHDL粒子の凝集状態が異なることを見出した。凝集構造をとるものは、先のHDL粒子の異常形態のものと一致した。生活習慣が、生化学検査値のみならず、HDLの粒子形態そのものに影響を与えていることがわかった。
|