本研究では、地域住民を対象として食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量や血清脂肪酸分画を測定し、腎障害発症・進展に関する疫学的検討を行うことが主な目的である。具体的な研究項目は、①農村と漁村における食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量および血清脂肪酸分画の比較、②食生活の変化に伴う食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量の10年間の変化、③血清n3系およびn6系不飽和脂肪酸と腎障害発症についての検討、④血清n3系およびn6系不飽和脂肪酸と腎障害進展への関連についての検討の4つであった。 ①農村と漁村における食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量および血清脂肪酸分画の比較については、農村と漁村における食習慣や生活習慣の相違から、食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量および血清脂肪酸分画についての相違が認められた。また、血清脂肪酸分画において、n3系多価不飽和脂肪酸は食事による摂取量と血清脂肪酸分画のEPA値との間に有意な正の関連が認められたが、n6系多価不飽和脂肪酸の食事による摂取量と血清脂肪酸分画のAA値との間には、有意な正の関連は認められなかった。 ②食生活の変化に伴う食事由来の多価不飽和脂肪酸摂取量の10年間の変化では、n3系多価不飽和脂肪酸に比較し、n6系多価不飽和脂肪酸の摂取量が経年的に上昇している傾向が認められた。 ③血清n3系およびn6系不飽和脂肪酸と腎障害発症については、10年間の縦断研究において微量アルブミン尿の新規出現を指標とした腎障害発症については、有意な関連は認められなかったが、今後も長期的な追跡研究を引き続き検討していく方針である。 ④血清n3系およびn6系不飽和脂肪酸と腎障害進展への関連については、10年間の縦断研究において微量アルブミン尿の定量評価を指標とした腎障害進展については、有意な関連は認められなかったが、③と同様に今後も長期的な追跡研究を引き続き検討していく方針である。
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