本研究の主たる目的は、臨床の立場から便潜血検査免疫法(FIT)による早期・進行大腸癌の部位別・進行度別(ステージおよび壁深達度別)・腫瘍径別・肉眼型別診断感度を多数例にて検討し、現行の大腸癌検診の限界と改善点を明確にすることである。
333例の大腸腫瘍性病変(Advanced neoplasm)の症例集積とFIT測定が完了し、その結果を昨年の米国消化器病週間(DDW)にて発表した。登録333例の内訳は以下の通りである。10 mm以上の腺腫:114例、粘膜内癌:54例、粘膜下層(SM)浸潤癌:48例、進行癌:117例。 FIT2日法による診断感度は、10 mm以上の腺腫:45.6%、粘膜内癌:48.1%、粘膜下層(SM)浸潤癌:77.1%、進行癌:91.5%であり、深達度毎の部位別診断感度は以下の通りであった。10 mm以上の腺腫;近位結腸/ 遠位結腸:34.8%/ 60.4%、粘膜内癌;近位結腸/ 遠位結腸42.3%/ 53.6%、粘膜下層(SM)浸潤癌;近位結腸/ 遠位結腸:66.7%/ 83.3%、進行癌;近位結腸/ 遠位結腸:81.3%/ 95.3%。
以上の結果から、FITは大腸癌のスクリーニング法として良好な診断感度を示すものの、その進行度および病変部位により差があり、早期の近位結腸(盲腸~横行結腸)病変に対する診断感度の低下が示された。上記データに関する報告以降もエントリーを継続して行った。最終的に500例でのデータ解析および英語論文化を図る予定である。
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