研究課題
本研究では,前向きコーホート研究「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」に登録している母児を対象として,胎児期の環境化学物質曝露によるDNA損傷と母児の遺伝的感受性素因の交互作用が胎児発育や生後の身体発育および免疫機能に及ぼす影響を解明することを目的とした。母460名の平均年齢は,30.8±4.9歳,妊娠前のBMIは,21.2±3.3kg/m2であった。初産婦は46.7%(215名),短大・大卒以上が55.2%(254名),妊娠中に喫煙した者(途中禁煙者も含む)は24.1%(111名),飲酒した者は30.4%(140名)であった。DNA損傷度指標となる母体血清中8-OHdG濃度は0.130 ng/mL(中央値)であった。母体血清中8-OHdG濃度と母児のPON1遺伝子多型,OGG1遺伝子多型,ERCC1遺伝子多型,XRCC1遺伝子多型との交互作用が胎児発育や生後の身体発育に及ぼす影響については有意な関連は認められなかったが,3歳半時のアレルギー性疾患・感染症との関連では,母体血清中8-OHdG濃度が2.7倍上昇すると,児の遺伝子多型がERCC1遺伝子CC型の場合は喘鳴リスクが2.26倍になり(95%CI: 1.03-4.95, p=0.04),XRCC1遺伝子AG/AA型でも喘鳴リスクが1.94倍と増加する傾向が認められた(95%CI: 0.98-3.86, p=0.06)。一方,1歳半および7歳時のアレルギー性疾患・感染症への有意な関連はなく,母の遺伝子多型との関連も認められなかった。近年,子どもの肥満やアレルギー疾患が世界的に増加していることが報告されているが,本研究から環境化学物質の胎児期曝露によるDNA損傷の個体差が児の健康に影響を及ぼすことが示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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