研究課題
昨年度までに得られた慢性咳嗽患者の咳症状と黄砂の関係について解析を深めるために、今年度も、金沢大学附属病院の呼吸器内科に定期的に来院している気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、いずれかの診断を受けた患者さんにおいて、11月~翌年6月まで毎日アレルギー日記に咳やたん、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、眼のかゆみ、皮膚のかゆみ等、自覚症状や自宅で測定したピークフロー値を記録して頂き、患者疫学調査を継続して行った。黄砂データは、レーザー観測(LIDAR)による富山上空の黄砂観測結果をもとに、地上付近の黄砂濃度を推計したものを使用した。また、金沢大学附属病院および関連病院の耳鼻咽喉科に来院する通年性鼻アレルギー、季節性鼻アレルギー、好酸球性副鼻腔炎、鼻茸、いずれかの診断を受けた患者さんにおいて、前年度までに実施したアレルギー日記調査のデータの入力とデータベース構築を行い、データ集計を開始した。既にデータ入力を完了している前年度までの呼吸器内科の患者調査データについては、データ解析を進め、慢性咳嗽患者のアレルギー症状と黄砂、大気汚染物質ならびに黄砂中の金属類、PAHs等の濃度の関連性を、ロジスティック回帰分析、一般化推定方程式によって解析した。その結果、PAHs,NO2, SO2の濃度と咳症状に関連があること(Int J Environ Res Public Health.13, pii: E800, 2016.)、PAHsでは4環と5環のどちらも低濃度で咳症状と関連があること(Atmos Environ 140, 34-41, 2016)がわかり、論文発表を行った。今後もさらに詳細なデータ分析を続け、症状の原因となる物質の特定と、患者さん側の特性について明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
予定通り調査を継続することができたため。また、前年度までに回収したデータのデータベース構築とデータ解析を進めることが出来て、その結果、新しい知見の論文報告できたため。
今後もデータベース構築の完了に向けて作業を進める。今年度までに得られた知見を深めるために、さらに詳細なデータ分析を続け、症状の原因となる物質の特定と、患者さん側の特性について明らかにする。
物品費の使用を抑えることが出来たため。
日記の郵送関係費用、情報収集と成果発表のための旅費、論文投稿のための費用に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Int J Environ Res Public Health
巻: 13 ページ: 800,805
10.3390/ijerph13080800
Atmospheric Environment
巻: 140 ページ: 34,41
10.1016/j.atmosenv.2016.05.042
アレルギーの臨床
巻: 36 ページ: 72,76
巻: 36 ページ: 1392,1396