研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに実施したアレルギー日記調査のデータ入力を完了させ、データ整理と解析を進めた。慢性咳嗽患者のアレルギー症状と黄砂、PM2.5、大気汚染物質(SO2, NO, NO2, NOx, Ox, SO2, NO, NO2, NOx, Co, Ox, NMHC, CH4, THC, SPM)黄砂中の金属類(Ca,Cd, Cr, Fe, Mn, Ni, Pb)ならびにPAHs (Frt, Pyr, Chr, BbF, BkF, BaP) の濃度の関連性を、ロジスティック回帰分析、一般化推定方程式によって解析した。曝露当日の影響だけでなく、翌日から7日後の影響(lag効果)についても解析した。また、男女差、年齢、BMI, など患者さん側の特性よる影響の違いについても再分析した。 その結果、大気汚染物質の中で、特にNO2, SO2の濃度と咳症状に関連があり、その影響は少なくとも2日後まで見られることが分かった。金属類はほぼすべての種類で濃度と咳症状や眼のかゆみの症状に影響が見られた。PAHsについては、4環と5環のどちらも低濃度で咳症状と関連があることを本研究で以前に報告したが、種類ごとの解析を進めた結果、特に4環ではFrt, Pyr, 5環ではBbFで影響が強い傾向が見られ、さらなる解析が必要であると考えられた。PAHsの影響もNO2, SO2と同じく、少なくとも2日後まで見られた。男女差についてはアレルギー症状全般的に見られた。年齢はアレルギー症状の種類によって年齢が高くなると症状が収まるものと、変わらないものがあり、BMIによって症状の強さに違いが出るものもあった。これらの患者さんの特性はロジスティック回帰分析で調整因子として解析してきたが、今後、患者さんの特性にさらに詳細に着目して大気環境の健康影響評価を進めていくことが重要であると考えられた。
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