これまで、長時間労働により変動する心血管バイオマーカーの検索で、アディポネクチン・マトリックスメタロペプチダーゼ-9・small-dense LDL・マロンジルデヒド修飾LDL(MDALDL)・ホモシステイン・高感度- CRP等を検討し、small-dense LDLやMDL-LDLが病態を反映する生化学的指標として有用である可能性を報告した。今回は、これらの脂質関連因子について、協力の得られた企業体における2回(1年間隔)の健診時に測定し、同時に喫煙歴・食事嗜好・時間外労働時間等についてアンケート調査を実施するとともに脂質関連因子の変化等について比較検討した。本研究において、1年の間隔で実施された2回の測定の比較で、時間外労働を有していた群においては、LDLコレステロール値に関しては2年間で有意差は認められなかったが、small-dense LDLおよびsmall-dense LDL/LDLコレステロール値は有意に増加していた(p<0.05)。時間外労働を有していなかった群においては、LDLコレステロール値、small-dense LDLおよびsmall-dense LDL/LDLコレステロール値に関しては2年間で有意差は認められなかった。喫煙群においては、LDLコレステロール値に関しては2年間で有意差は認められなかったが、small-dense LDLおよびsmall-dense LDL/LDLコレステロール値は有意に増加していた(p<0.05)。これらの所見から、時間外労働はSD-LDL/LDLを増加することで動脈硬化巣形成を促進する可能性が示唆された。
|