研究課題/領域番号 |
25460796
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 佳督 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90506635)
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研究分担者 |
仲井 邦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291336) [辞退]
元吉 忠寛 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (70362217) [辞退]
齋藤 充生 帝京平成大学, 薬学部, 准教授 (30392301)
早瀬 隆司 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (40301361)
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
磯貝 恵美子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80113570)
中村 こず枝 岐阜市立女子短期大学, 食物栄養学科, 准教授 (60444270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線影響 / リスク認知 / 東日本大震災 / フォーカスグループディスカッション / リスクコミュニケーション |
研究実績の概要 |
平成23年3月11日に未曾有の東日本大震災が生じ、さらに引き続き福島第一原子力発電所水素爆発事故による放射性物質の飛散が大きな社会問題となって今日に至っており、東北ではいまもなお多くの被災者が人体への放射線影響に不安を感じながら暮らしている。 このため、我々が平成22年度より「薬のリスク等をテーマとした医療分野へのリスクコミュニケーションの応用に関する研究」(科学研究費基盤C)として実施した研究成果を最大限に活用しつつ、被災地での放射線影響に関してなされたリスクコミュニケーションの評価に関する研究を行うものであり、これにより今後とも鋭意なされる放射線影響リスクに関するコミュニケーションを行う際の一助となるあり方の提案を行うことを目的として研究を実施している。 平成26年度には、以下のとおり研究を実施した。 まず、放射線影響リスクに関するフォーラム型リスクコミュニケーションを仙台市、岐阜市、長崎市で開催し、平成25年度に実施した調査結果を多角的に検討するためのデータを得た。また、福島県いわき市では、フォーカスグループディスカッションを実施することにより、市民と行政との間のリスクコミュニケーションのあり方に対する認識の差異などについて、より詳細な調査結果を得ることができた。あわせて、福島県のいわき市医師会との間で、医師から見た放射線リスクコミュニケーションの評価に関する調査を行うための協力依頼にかかる調整作業を実施した。 さらに、本研究にかかる調査結果について順次とりまとめを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には、放射線影響リスクに関するリスクコミュニケーションを、調査の一環として仙台、福島、岐阜、長崎で開催した。仙台、岐阜、長崎では、フォーラム型で行い、その参加者に、平成25年度に実施したインターネット調査と同様の調査内容である福島第一原子力発電所水素爆発事故以降に人体への放射線影響に関するリスクコミュニケーションに参加したことがあるか否か、ある場合には、その際のテーマの内容の難易度や、参加後に放射線への認知が変容したかなどに関して、さらにはその会合自体の満足度に関する評価について回答していただいた。さらに、ベクレルやシーベルト、内部被爆や外部被爆など、人体への放射線影響を認知する上で重要な意味を持つ用語について、知っているか否かに関する認知度の調査を実施することにより、調査結果を多角的に検討するためのデータを得た。 また、福島県のいわき市においては、フォーカスグループディスカッションを実施し、市民と行政との間のリスクコミュニケーションのあり方に対する認識の差異などについて、より詳細な調査結果を得ることができた。あわせて福島県のいわき市医師会との間で、医師の放射線リスクコミュニケーションの評価にかかる調査協力を得るための調整作業を行うことができた。 さらに、平成25年度に実施した研究のうち、放射線影響に関するリスクコミュニケーションを担当した専門家6名への半構造化面接調査の結果については、邦文論文として公表を行った。 このように、研究の内容を充実させるための研究計画の変更があったものの、おおむね順調に研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに専門家への半構造化面接調査並びに市民へのインターネット調査から得られた調査結果に加えて、放射線影響リスクに関するフォーラム型リスクコミュニケーションを仙台、岐阜、長崎で開催し、その参加者から、調査結果を多角的に検討するためのデータを得たところであり、また福島県いわき市においてフォーカスグループディスカッションを実施し、市民と行政との間のリスクコミュニケーションのあり方に対する認識の差異などについて、より詳細な調査結果を得たところである。 当初計画では、福島、宮城において、リスクコミュニケーションを開催し、リスク認知の変容要因を探るべくこれまでの心のよりどころとなった有益なリスク情報や、今後の情報提供として期待する事項について調査することとしていたが、福島にあっては、その前段階として、リスク認知の変容要因を探るうえで、福島における医師からみたリスクコミュニケーションの評価に関する調査を行うことが有益かつ不可欠であると考え、この調査をまずは行うこととする。一方仙台に加えて、平成26年度調査で得られた今後の情報提供として期待する事項を反映させたリスクコミュニケーションについて、平成27年度も引き続き、岐阜と長崎を加えて、3都市で実施することにより、効果にかかる比較衡量を行う。その際、フォーラムのなかで調査アンケートを行うことと、アンケートへの協力をいただける方を対象に参加をしていただきたいと考えている旨を告知したうえで、傍聴希望者各80名程度を募集する。 さらに、これまでの研究内容をとりまとめ、欧州・米国リスク研究学会など関連国際学会で発表するとともに学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の当初計画では、仙台、福島、岐阜、長崎の4としてフォーラム型リスクコミュニケーションを実施することとしていたが、このうち、福島については、その前に、市民および地方行政官を対象にフォーカスグループディスカッションを行うとともに、福島の医師からみた放射線リスクコミュニケーションの評価について調査を進めることが、リスク認知の変容要因を探るうえで有益であると考えた。 しかるに、このうち、医師からみた放射線リスクコミュニケーションの評価に関する調査については、実行可能性の観点から、調整が必要であったことから、実査については平成27年度にインターネットを用いて回答いただくこととした。 このため、この調査にかかる部分について、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、福島県いわき市医師会に所属する医師からみた放射線リスクコミュニケーションの評価について、いわき市医師会の協力を得ながら、調査を進めることとしており、その中で、次年度使用分について執行する。 また、今後の情報提供として期待する事項を反映させたリスクコミュニケーションの効果を測定するために、仙台に加えて、平成26年度と同様に、岐阜、長崎でのフォーラム型リスクコミュニケーションの開催・運営を行うとともに、これまでに得られた成果をとりまとめ、学会等で発表するために、翌年度分として請求した助成金を執行する。
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