研究課題/領域番号 |
25460798
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
及川 佐枝子 (多田 佐枝子) 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 特任助教 (90610585)
|
研究分担者 |
市原 学 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90252238)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ナノ材料 / 二酸化チタン / 酸化亜鉛 / マクロファージ / 炎症 |
研究概要 |
本年度は、ナノ粒子によるスカベンジャーレセプターを介した炎症反応の誘導およびマクロファージ泡沫化の促進作用を検討した。ヒト単球細胞THP-1をphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) で刺激しマクロファージ様に分化させ、二酸化チタンおよび酸化亜鉛のナノ粒子を曝露し、まず細胞内活性酸素産生の解析を行った。その結果、二酸化チタンナノ粒子 1 および 5 ug/mlでは活性酸素の産生は認められなかったが、10 ug/mlでは認められた。一方、酸化亜鉛ナノ粒子曝露では、1 ug/mlから産生が認められた。次に、マクロファージはスカベンジャーレセプターを介して変性LDLを取り込むと泡沫(foam)化することから、ナノ粒子曝露におけるマクロファージ泡沫化の促進作用を検討した。酸化亜鉛ナノ粒子をTHP-1単球へ曝露後、マクロファージ様細胞に分化させたところ、アセチル化LDLの取り込みが増加した。一方、二酸化チタンのナノ粒子の曝露においては変化が認められなかった。 スカベンジャーレセプターのCD36およびSR-Aの発現は、酸化亜鉛ナノ粒子の曝露により増加したが、二酸化チタンのナノ粒子曝露では変化が認められなかった。酸化亜鉛ナノ粒子はスカベンジャーレセプターCD36およびSR-Aの発現の上昇を促し、マクロファージの泡沫化を促進させ粥状動脈硬化症を増悪する可能性が示唆された。さらに本年度は、血管内皮前駆細胞を用いて酸化亜鉛ナノ粒子およびミクロ粒子による細胞毒性作用および血管形成作用への影響についても検討を行った。その結果、酸化亜鉛ナノ粒子、ミクロ粒子の曝露により同程度に濃度依存的に生存率が減少し、アポトーシスの誘導も認められた。さらにチューブ形成についても酸化亜鉛ナノ粒子、ミクロ粒子の曝露により同程度に阻害が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、種々のナノ粒子(二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカなど)およびカーボンナノチューブについて、ヒトマクロファージ様細胞を用いてスカベンジャーレセプターを介したナノ粒子の取り込み、および炎症反応の誘導機構の解明を行う。本年度は、ナノ粒子曝露による炎症反応の誘導およびマクロファージ泡沫化促進作用の解析を行った。二酸化チタン、酸化亜鉛についてヒトマクロファージ様細胞を用い、活性酸素の産生および泡沫化の促進作用について解析を行い、ほぼ予想通りの結果が得られた。さらに、血管内皮前駆細胞を用いてナノ粒子による血管内皮系への影響を検討するため、酸化亜鉛ナノ粒子およびミクロ粒子による細胞毒性作用および血管形成作用への影響についても解析を行った。また、炎症性腸疾患モデル動物にナノ粒子を曝露し、大腸炎の誘導・増悪作用の解析を行ったが、ナノ粒子曝露による顕著な増強作用は認められなかったため、この実験系に関しては、今後、炎症誘導剤、ナノ粒子の濃度、さらに曝露時間について検証し、さらに大腸炎の増強効果について解析を進める必要がある。平行して大腸上皮のモデル細胞を用い、大腸炎増強作用について解析する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、二酸化チタン、酸化亜鉛のナノ粒子によるマクロファージ様細胞内活性酸素産生の解析を行い、酸化亜鉛ナノ粒子曝露により産生が認められた。さらに酸化亜鉛ナノ粒子のTHP-1単球への曝露によりTHP-1マクロファージ様細胞においてアセチル化LDLの取り込みが増加し泡沫化の促進作用が認められた。さらにスカベンジャーレセプターのCD36およびSR-Aの発現は、酸化亜鉛ナノ粒子の曝露により増加したが、二酸化チタンのナノ粒子曝露では変化が認められなかった。酸化亜鉛ナノ粒子はスカベンジャーレセプター、CD36およびSR-Aの発現の上昇を促し、マクロファージの泡沫化を促進させ粥状動脈硬化症を増悪する可能性が示唆された。今後、ナノ粒子のマクロファージへの取り込みにおけるスカベンジャーレセプターの関与についてより詳しく解析を行うため、ナノ粒子が細胞膜ドメインのクラスリン、あるいはカベオラのどちらに依存するエンドサイトーシスにより取り込まれるかを、阻害剤を用いて検討を行う。さらに、ナノ粒子曝露による炎症性腸疾患モデル動物における大腸炎の誘導・増悪作用の解析について、炎症誘導剤、ナノ粒子の濃度、さらに曝露時間について検証し、さらに大腸炎の増強効果について解析を進める予定である。
|