研究課題
一次粒径が1~100nmのナノ材料は、次世代の産業基盤技術として期待されているが、その安全性評価は進んでいない。ナノ粒子曝露による生体への影響としては、酸化ストレスおよび炎症反応の惹起が考えられ、炎症性疾患の誘導あるいは増悪に関与する可能性が考えられる。本研究では、化粧品や医薬品、食品添加物などに広く利用されている酸化亜鉛や二酸化チタンなどのナノ粒子について、炎症反応の誘導・増悪作用を解析し、安全性の検討を行う。本年度は、種々の結晶型および粒子径の二酸化チタン(TiO2)粒子(アナターゼ型:50nm,100nm、ルチル型:50,100nm、80%アナターゼ/20%ルチル(P25):21nm)について、ヒト単球細胞THP-1をphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) の刺激によりマクロファージ様に分化させた細胞および大腸上皮癌細胞Caco-2を用い、炎症反応誘導作用について検討を行った。その結果、活性酸素種の産生は、THP-1マクロファージおよびCaco-2において、すべての種類のTiO2粒子(25,50μg/ml)曝露により認められたが、THP-1マクロファージにおける炎症性サイトカインのIL-1βの産生は、50μg/mlのアナターゼ型粒子(50nm)のみ認められた。またRT-PCR法を用いたCaco-2細胞における炎症性サイトカインIL-8の発現についても、50μg/mlのアナターゼ型粒子(50nm)により認められたが、ほかのTiO2粒子では認められなかった。以上のことから、今回使用した種々の結晶型、粒子径のTiO2粒子のなかでも、アナターゼ型TiO2 ナノ粒子は炎症反応を誘導することが示唆された。その他のTiO2粒子についても活性酸素の産生が認められていることから、生体になんらかの影響を与える可能性が考えられる。結晶型や粒子径による細胞への取り込みの違いを解析するなど、さらなる検討が必要である。
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