研究実績の概要 |
コホート研究により、認知症による要介護発生と周辺症状の危険因子を明らかにした。65歳以上2962人を追跡し、平均9.9年追跡した。認知症要介護278人、周辺症状(BPSD)127人(内軽症69人)を確認した。 認知症による要介護発生の危険因子は、目が不自由(ハザード比(HR)=1.74)、あまり噛めない(HR=1.65)、物忘れの自覚(HR=1.50)、電話かけられない(HR=2.15)、趣味・楽しみない(HR=1.70)、防御因子は、集落役員(HR=0.57)、地域活動参加なし(HR=0.45)であった。BPSD発生者と要介護状態ない人の比較では、目が不自由(HR=2.99)、物忘れの自覚(HR=1.80)、相談のらない(HR=1.68)が危険因子で、集落役員(HR=0.36)、地域活動参加なし(HR=0.41)が防御因子であった。認知症要介護者の中では、BPSDの危険因子は、物忘れの自覚(HR=2.05)、預貯金出し入れ不可(HR=1.97)、町健康づくり活動参加(HR=2.73)、地域活動参加なし(HR=2.54)、糖尿病既往(HR=1.81)、疾病既往無(HR=2.68)であり、防御因子は目が不自由(HR=0.50)、レクサークル参加(HR=0.45)であった。物忘れ自覚を申告する人を認知症予防教室の対象にすることは妥当性がある。地域の世話役活動、人との交流等で生きがいや楽しみを感じられることが重要だと考えられた。基本健康診査受診者1442人の解析では、認知症要介護(119人)の危険因子は、中性脂肪10mg/dl上昇(HR=1.03),貧血の既往(HR=1.84)であった。要介護発生なし群に対するBPSD発生の危険因子は、糖尿病治療中で管理良好(HR=4.11)、であった。栄養状態や糖尿病の管理状況がBPSD発生に関係する可能性はあるが、一貫した結果でなかった。
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