研究課題
文献検索から、自己実現状況の測定尺度として、主観的健康観が用いられることがわかった。このことから、主観的健康観を高い水準で維持することに関連する因子を明らかにすることが、本課題のねらいに合致すると考えられたので、本研究課題で収集した研究資料を解析して、主観的健康観の関連因子を、健康状態(現病歴、入院の既往、からだの痛み)、生活機能(老研式活動能力指標)、社会経済的背景(教育年数、暮らし向き、就労)、社会活動性(外出頻度、グループ活動参加頻度、親族・友人・隣人の数、携帯電話・パソコンを含む情報端末の使用頻度)の4領域について探索した。各領域でとりあげた項目が一貫して主観的健康観と関連したことは、先行研究の結果と一致した。先行研究にはない本課題にユニークな結果は、情報端末の使用状況が主観的健康観の関連因子として検出されたことである。月1回以上情報端末を使用することと高い主観的健康観との関連を表すオッズ比は、性、年齢別に検討すると、男女とも65-74歳の者で、調整する因子の領域によらず有意に高かった。すなわち、健康状態、生活機能、社会経済的背景、社会活動性(情報端末の使用頻度以外の項目)の4領域を個別に調整した時のオッズ比は、男では、生活機能を調整した時の1.6(95%信頼区間、1.1-2.2)から、健康状態を調整した時の1.8(1.2-1.5)の間に、女では、社会活動性を調整した時の2.1(1.5-3.1)から健康状態を調整した時の2.4(1.7-3.4)の間に分布した。これらの結果は、前期高齢者では、情報端末の使用が主観的健康観の維持に寄与することを示唆している。今後、主観的健康観の変化を把握できる追跡調査を加え、情報端末の使用と主観的健康観の維持との関連が縦断的にも認められるかを検証する。その結果を踏まえ、主観的健康観の向上維持を土台とする自己実現の方策を考察する。
2: おおむね順調に進展している
自己実現状況の測定尺度として、主観的健康観が用いられることを明らかにし、主観的健康観の関連因子として、携帯電話・パソコンからなる情報端末の利用状況という、新しい因子を明らかにできた。
自己実現状況の測定尺度として、主観的健康観が用いられることを明らかにできたので、主観的健康観の変化を把握できる追跡調査を加える。
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Geriatrics & Gerontology International
巻: 印刷中 ページ: -
BMC Geriatrics
巻: 14 ページ: 93
10.1186/1471-2318-14-93