研究実績の概要 |
初年度の検討で考案した自己実現状況を客観的側面によって捉えるスケール(仕事や家事をする時間、余暇での身体活動の頻度、趣味活動の頻度、地域活動への参加頻度の4要素のうち、その値以上であれば望ましい状態であると操作的に定義した区分値以上を示す要素が2要素以上であれば、自己実現状態にあると判定するスケール)と、二年度の検討で、自己実現状況の主観的側面を反映していると指摘した主観的健康観の2つを組み合わせ、高齢者の自己実現状況を、「主観的側面と客観的側面の両方で実現」、「主観的側面だけで実現」、「客観的側面だけで実現」、そして「両方の側面ともで非実現」の4カテゴリーに分類した。ベースライン質問紙調査回答者のうち、自己実現状況の2つの側面の評価に必要な変数に欠測がなかった840人を、要介護認定を受けずに生存していること(以下、自立生存)をエンドポイントとする追跡の対象とした。 自立生存のオッズは、多重ロジスティック回帰モデルによって性、年齢、入院歴および現病歴を調整すると、「両方ともで実現」を基準として、「主観的側面だけで実現」〔調整オッズ比0.52(95%信頼区間 0.30, 0.91)〕、「客観的側面だけで実現」〔調整オッズ比0.47(95%信頼区間 0.26, 0.88)〕、「両方ともで非実現」〔調整オッズ比0.34(95%信頼区間 0.20, 0.58)〕のいずれのカテゴリーでも有意に低かった。 高齢者の自立生活の維持という観点からは、自己実現の主観的側面と客観的側面にはそれぞれ固有の意義があり、両方の側面を評価する必要があること、また、高齢者の自己実現を自立生活の維持につなげるためには、主観的側面と客観的側面の両方での自己実現が必要なことを明らかにできた。
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