研究課題/領域番号 |
25460806
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平田 美由紀 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30156674)
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研究分担者 |
田中 昭代 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10136484)
田中 茂 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (60171758)
中野 真規子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70384906)
米本 孝二 久留米大学, 付置研究所, 講師 (90398090)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インジウム / 毛髪汚染 / 作業者 |
研究概要 |
【調査1:インジウム現曝露者の採毛】 二つのインジウムリサイクル工場でインジウム取扱工程に従事する36名の男性作業者に採毛協力を呼びかけ、35名から同意を得て採毛を行った。作業者は仕事中にはヘルメットを着用しているが、ヘルメットに覆われない後頭部頭髪を約50mg採取した。採取は出勤直後の始業前(=作業前)と退勤前(=作業後)の2回実施した。35名中のミスト曝露者21名と粉塵曝露者6名の計27名について解析を行った。 結果: インジウム作業者27名の作業前の毛髪インジウム濃度は平均で41.8µg/gであった。作業後には毛髪濃度は有意に上昇し4倍強の高値を示した。ミスト作業者では作業前後の毛髪インジウム濃度の変化は小さかったが、粉塵作業者では作業後に毛髪濃度が著しく増加していた。 【調査2:インジウム現曝露者の個人曝露濃度測定】 調査1で採毛を実施したインジウムリサイクル作業者中の5名に対して、個人曝露モニタリングサンプラーを用いて、曝露するインジウム量を個人毎に把握した。 結果: 作業後毛髪濃度から作業前毛髪濃度を差し引いた毛髪インジウム濃度と個人曝露濃度との相関をみたところ、作業日における毛髪濃度上昇は個人曝露濃度濃度と相関していた。 【毛髪付着インジウム解析試験】 インジウム汚染のない一般人人毛を用いて、塩化インジウム溶液に浸漬後に乾燥した塩化インジウム溶液浸漬毛髪を作成した。この毛髪を用いて、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター内にある九州大学ビームラインを利用して、毛髪の蛍光X線吸収微細構造測定システム(蛍光XAFS)法によりインジウムの毛髪結合(付着)状態を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インジウムの職業性曝露には二つの形態、すなわち粉塵曝露とミスト曝露があり、毛髪にインジウムが付着する形態も異なると考えられる。調査1では、インジウムリサイクル工場の作業者に注目し、インジウムスズ酸化物(ITO)等のインジウム化合物の粉塵を吸入すると考えられる作業者と、酸溶解液の加熱装置から発生するインジウムミストを吸入すると感がられる作業者に分けて、作業前後のインジウム毛髪付着状態の違いを分析することができた。 シンクロトロン光測定を用いて、作業者の毛髪に付着したインジウムの状態解析を行うため、最初の実験として、ミスト曝露物質と考えられる塩化インジウムに浸漬した標準毛髪試料を作成した。平成25年度において佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター内にある九州大学ビームラインを用いた予備試験を実施し、測定方法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にはインジウムスズ酸化物(ITO)ターゲット工場に調査を行い、インジウム化合物粉塵に曝露される作業者の毛髪インジウム濃度と個人曝露濃度の関連を調べる予定である。作業環境濃度の違いによるインジウムの毛髪付着量について、詳細評価を行う。 毛髪インジウムの付着微細構造解析では、平成26年度には酸化インジウムの粉塵を付着させた標準毛髪を作成し、塩化インジウム浸漬毛髪との違いについて比較分析を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にインジウム工場でのフィールド調査を実施する予定であったが、工場側の受け入れが整わなかった。その後の打診で、工場の受け入れ許可が出て、平成26年度には調査が可能になった。この調査費用に研究費をより多く充てるため、予算を繰り越しした。 平成26年度にはインジウム工場に出向いて、インジウム作業者の毛髪採取と作業環境測定士による個人曝露濃度測定を行うフィールド調査を実施する予定である。繰り越した研究費は、作業環境測定士の測定費用に充てる。
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