研究課題/領域番号 |
25460811
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
竹下 達也 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20150310)
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研究分担者 |
牟礼 佳苗 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90268491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 飲酒 / 多型 / アルコール脱水素酵素 / アルデヒド脱水素酵素 / アセトアルデヒド |
研究実績の概要 |
東アジア人はアルコール感受性や飲酒行動に影響を与える遺伝子多型として、アルコール脱水素酵素(ADH1B)におけるrs1229984と、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)におけるrs671を高頻度に有しているが、これまで高齢者においてこれらの遺伝子多型の影響は検討されていない。本研究では、これらの遺伝子型とフラッシング反応や飲酒行動、問題飲酒との関連について、日本人男性高齢者および非高齢者において検討した。 生活習慣病予防健診を受診した日本人男性718人を、高齢群361人と非高齢群357人に分けて解析した。各遺伝子型のフラッシング及び飲酒行動への影響、年齢と遺伝子型との交互作用については多変量ロジスティック回帰分析により解析を行った。 その結果、高齢群において̏いつもフラッシングが起こる̋頻度は、ADH1B*1/*2でADH1B*2/*2よりも有意に低く、このADH1B*1/*2の調整オッズ比は0.42 (p<0.01)であったが、非高齢群では有意差は見られなかった。年齢群とADH1B遺伝子型との交互作用項は有意であった。また、高齢群において毎日飲酒する割合はADH1B*1/*2でADH1B*2/*2よりも有意に高く、このADH1B*1/*2の調整オッズ比も1.7 (p<0.05)であった。一方、非高齢群では有意差は見られなかった。年齢群とADH1B遺伝子型との交互作用項は有意ではなかった。また、多変量ロジスティック解析の結果、高齢群でのみ、ALDH2*1/*1は、問題飲酒と有意な正の関連(オッズ比:3.8、p<0.01)が見られた。以上より、高齢群において、ADH1B*1/*2保有者とADH1B*2/*2保有者でアルコール感受性が異なることを明らかにし、飲酒行動にも差がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
職域男性において、アルコール代謝酵素の2つの重要な多型と多量飲酒との組み合わせとアディポネクチン値との関連性を見出してきた。また、地域住民において、高年齢群で、ADH1B遺伝子型により、アルコール感受性が異なり、さらに飲酒行動も異なる可能性が示唆された。また、地域住民において、PPARG遺伝子型と動脈硬化関連健康指標との関連性について、性、年齢により差異のあることを見出してきて、一定の成果が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、地域住民を対象とした生活習慣病予防健診を継続し、さらに人数を増加させることにより、遺伝子型の組合せによる生活習慣の健康指標に与える影響に関して、より精度の高い解析を行っていく。アルコール代謝酵素多型などは、東アジア人に特異的な多型であり、またメタボリックシンドロームや生活習慣病に与える影響も大きいため、大きな成果が得られることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析の精度を高める目的で、対象者を増加させて解析することに伴い、対象者のリクルートと遺伝子型の解析などに、予定よりも時間を要してしまい、H28年度までかかることになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度に持ち越した遺伝子型の解析等を行い、その後、全対象者において、遺伝・環境要因の健康指標に与える影響についての統計解析を行う。
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