本研究の目的は、1)わが国の男性の労働者世代における職業別の死亡率に関して、2010 年の人口動態職業・産業別統計より示すこと、2)死亡率の推移に関連する要因の検討のために1995年以降の職業別の生活習慣や予防行動(がん検診など)の推移の傾向を明らかにすることであった。 2010年においては、2000年に増加した専門職の死亡リスクは低下傾向となったが、管理職の死亡リスクは高止まりのままであることが示された。特に管理職における自殺のリスクが高いことが示され、今後優先すべき課題として取り組まれるべきである。また、死亡率に関連するストレスの影響や自覚的健康感については、管理職においては他の職種よりも良好であることがしめされた。しかし、これらのデータは中高年縦断調査によることから、人口動態統計とは少し対象群の特性が異なることが影響した可能性がある。 労働者世代の健康は、社会経済的な影響とも関連する。たとえば、不況などにより、企業のリストラや組織改編により大きな影響を受けてきた。近年も、世界的な不況により電機産業などわが国においてこれまで経済を牽引してきた産業において業績悪化やリストラが行われている。また、内需拡大で経済には良い効果があるが本研究でも確認されたようにサービス業の健康リスクの高さよ具体的名施策は今後より議論されるべきである。これらのデータのモニタリングにより、継続してリスクの高い対象を明らかにし、具体的な施策の実施、ならびにその施策の効果評価を行うことができると考えられた。
|