研究実績の概要 |
本研究は、4年間の期間に、女性医師の就労拡充に向けた労働衛生評価と職場環境整備尺度の開発を目的として複数の調査を行った。女性医師の長時間労働が妊娠に与える影響では、システマティックレビューを行い、早産との関連性について傾向を認めたが、労働負荷量の測定が妊娠トリメスターごとに異なるほか、自己申告による評価など限界点が多く、今後、本邦における前向き調査が必要と思われた。こうした労働負荷から女性の健康を守るため、女性医師の働きやすい尺度開発を行い環境整備に向けたツールを開発した(Horie, et al. Nihon Eiseigaku Zasshi)。所属する医療系総合大学ならびに全国若手病院勤務医師における類似調査をも同様に行い、女性はコペンハーゲンバーンアウトインデックスのemotional exhaustionが高い傾向があり、メンターの存在ならびに組織のサポートで精神的疲労度を緩和することが明らかにした(Taka, et al. Industrial Health, 2016)。ここから医療職における女性の継続的就労のカギとして組織における男女共同参画の取り組み(メンター配置や相談窓口の設置)などが有用であることが示された。また男女の性別役割分業は未だ健在であることが明らかとなる一方で、子供の存在はワークファミリーコンフリクトを招く要因としては知られていたが、我々の行った調査では子供の存在は時として働く母親において精神的な支えや励みといったプラスの効果をもたらすことも示された(Chatani, et al. Environmental Health and Preventive Medicine)。現在日本が直面している少子高齢化対策にもつながり、女性がいきいきと働くことのよいエビデンスが提示され論文を国際誌に発表した。平成28年度(最終年度)は職場の環境整備開発に向け、全国調査を実施、解析を行い現在論文化している。
|